■三国志キャラ伝>曹丕に最も近い「肉親」曹真伝(3)
■皇帝の代理として蜀攻め 『演義』では、司馬懿登場の前座、無能な将軍として描かれた曹真。 司馬懿と賭け事をやった。司馬懿は諸葛亮の手を読んでいたが、曹真は読み違えた。でも負けを認めたくないから、ごまかした。そんな詰まらん人物になってる。 陳寿は、司馬懿に対抗して躍起になる曹真を書いていない。曹真は『演義』で不当に貶められたんだ、可哀想に、なんて話もある。   でもぼくは『演義』の話は、根拠がないことだとは思わない。 劉備(及びその亡霊)を撃退することは、曹氏の悲願なんだ。始祖の曹操ですら、自ら漢中まで攻め入っている。曹丕は秦嶺を越えなかったが、呉には親征してる。ということは、長生きしたら蜀を攻めたかも知れない。曹真は、曹丕の片割れとして、自ら蜀を潰しておきたいんだ。 司馬懿が有能なのは認める。だから方面軍を率いさせる。だが、位の上下からしても、信念からしても、曹真に主導権があった。主導権があるべきだった。司馬懿に対抗する気持ちは、持っていたのだと思う。   230年。第一次北伐を退け(馬謖の馬鹿)、曹真は剣履上殿などの特典を受け、大司馬となった。曹真は、蜀の討伐を進言して、容れられた。 曹叡が自ら、曹真を見送った。曹真は、ただの将軍じゃない。皇帝の代理として、成都をつぶしに行ったに等しいのだと思う。 三十日以上の長雨が続いた。曹叡の詔が発せられて、曹真は撤退。。   ■曹真の金払い? ここで陳寿は、2つのエピソードを載せている。   (1)曹真は若い頃から、一族の曹遵、同郷人の朱讃と一緒に曹操に仕えていた。しかし2人とも若死にしたために、自分の領邑を分けて彼らの息子に与えてくれるように願い出た。曹叡は「曹真のおじちゃん、さすが。曹遵と朱讃の子にそれぞれ百戸を与え、関内侯とする」とした。 (2)曹真は遠征すると、いつも将兵と苦労を共にした。軍への賞賜で足りない場合は、自分の財産から分かち与えた。   1つ目のエピソードは、曹操と曹真の関係を思い出すよね。戦友の息子を引き取って、大切にする。曹操への恩返しなのだろう。 2つ目のエピソードから、彼が曹氏の王朝の主催者の側に立っていたという自負が見える。現代風に言うなら、経営者の発想だ。 賞賜が足りないとき、お上に「おくれよ」と言うんじゃない。それは、雇われ人の発想なんだ。曹氏である自分の財産は、すなわち王朝のものなんだ。自分の財産を、王朝の褒賞不足(評価の不手際)を補うのに使っても、当然だ。そう考えることが出来たのが、曹真だ。 金払いのいいおじさん、誠実なお人柄、なんて評価ではダメだと思う。そんな言葉では、曹真を言い表したことにならないと思う。
  ■曹真の死 曹真は病気になった。 諸葛亮が命を削って、中原を虎視眈々と狙っているんだ。誠実な執念を、曹真はたった一人で受け止め続けた。中原への防波堤をやった。 一緒に戦ってる司馬懿は、ストレス耐性がありそうだ。司馬氏は曹氏じゃないから(当たり前)天を祭る重圧を感じていない。司馬懿と酒を酌み交わしても、気が紛れそうにないよ笑   曹叡が自ら屋敷に見舞ったが、復活しなかった。曹丕に遅れること5年、曹真は死んだ。推定45歳。「曹丕よ、すまんな。君の息子を守り通せなかった」という無念の思いがあっただろう。 蜀攻め失敗の翌年だった。 孫策が早死にして、周瑜も早死にした。強固に志を共有し、まるで双子のように駆け回る英雄は、どうも長持ちしないね。お互いの存在がプレッシャーになって、寿命を縮め合ってるようだ。それがダメだと言ってるんじゃない。すごく輝かしい生き方だと思う。でも、しんどいなあ。   この年の2月、諸葛亮が祁山を包囲した。眉間に皺を寄せた諸葛亮が、夜叉のように迫る。その気迫を全身で受け止めながら、曹真は息を引き取ったのだと思う。 『演義』では、諸葛亮から罵倒の手紙が届いて、憤って死んでしまった。荒唐無稽だ。荒唐無稽には違いないが、曹真の心を考えると、あり得る話かも知れない。 『演義』では、諸葛亮が文筆に優れる点が強調された。手紙を送るだけで、敵の司令官を殺せるのかよ!と。 でもぼくは、曹真側から読み解きたい。曹真は、諸葛亮からの手紙なんかですらトドメを刺されてしまうほど、曹操以来の運命と向き合っていたんだ。今にも砕けそうなガラスの彫刻になっていたんだ。   曹真の亡き後、司馬懿がこの方面軍を仕切ることとなった。劉備の亡霊を背負った諸葛亮と、曹操が作った残敵の掃討に従事する司馬懿。かなりメンタリティの違う二人が、五丈原の終焉に向かって戦い始めた。
  曹真の後は、息子の曹爽が継いだ。曹爽の活躍については、また後日。 曹爽が司馬懿に殺されることなんて、まだとても言えないよ!先の楽しみがなくなってしまうもんね。しかし、どっちも日本語音が「ソウソウ」というのは困ったことだ。 名を侵すことは、不孝の絶頂。 曹真さんよ。義父への配慮はどうしたんだ!と、辺境の倭から叫びたい笑
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