■三国志キャラ伝>偽りの投降は、恋愛と同じ。周魴伝(3)
■5通目「暴露トーク」 曹大司馬様へ。 孫権の国は、一枚岩に見えますが、実はバラバラです。 私が太守をやってる鄱陽では、夜な夜なケンカが堪えません。孫権は、国外を攻めるために大軍を動かし、国内の守りはスカスカです。私が一声かければ、すぐに国家転覆しちゃいます。 もし曹休様がお忙しいなら、「長江あたりに行こうかなー」と記者会見でおっしゃるだけで充分です。それだけで、孫呉の民は勇気づけられて、立ち上がることができます。地元育ちの私が言うのですから、本当です。 お得なチャンスは今日限りですよ!周子魚より。   回を重ねるに従って、だんだん周魴の手紙が、上手になって説得力を高めていくのは何故だろう笑 孫権の内患は、後世の学者たちも口を揃えて指摘する。周魴の言うとおりなんだ。 まあ、最後の「今日しかない」という発言の根拠が見当たらないものの。 自分の都合を、手紙で押し付けちゃダメだよね。曹休はまだ40代だし、最高位だし、政敵も見当たらないから、急がないんだけど笑   ■6通目「応援してほしいだけ」 曹大司馬様へ。 孫権は今年、たっぷり新卒を採りました。うちの人事担当者の藩濬が、荊州南部の蛮(異民族)を、青田刈りしたんです。 このたび、新しい城攻めの方針が出されました。 「新卒の弱い兵を先頭に立てろ。若手を、城濠に突き落とせ。城濠が死体で埋まったら、踏み越えて、熟練社員が突入せよ」と。 孫権は以前、魏の石陽攻略に失敗しました。 いま孫権は、新しい方針で石陽を攻める予定です。石陽は小さい城です。孫権のえげつない攻撃で、陥ちてしまう気がします。 もし遠くに曹休様の御旗が見えれば、頑張れるでしょうに。周子魚より。   余韻の引っ張り方が、いいね。 っていうか、孫権はなんて攻め方をしているんだ。孫権は(5通目にあるように)異民族対策に苦しむ。だけど、こんな兵の使い方をしてたら、そら、服従しないさ笑 周魴の誇張であってくれ…
  ■7通目「気持ちの確認」 曹大司馬様へ。 初めてのお返事、感謝します。故郷に帰ってきた鮭、いえ、登竜門を突破した鯉の心地です。子魚は感激しております。 さて、私が大事を起こすにあたり、先立つものが必要です。 同志を増やし、同志を勇気づけるため、爵位をバラ撒かせて下さい。将軍位を50、侯の身分を50、郎将を100、校尉を200、都尉を200、お願いします。※お支払は印綬で。 これまで、お手紙がくどかったと思いますが、お許し下さい。周子魚より。   曹休から返事が来たのか、よく分かりませんが、勝手に付け加えさせてもらいました。だって、こんな具体的な要求をするには、必ず返信が前提でしょう。じゃないと、よほどの妄想くんだ。   ■番外編「孫権への手紙」 偉大なる皇帝陛下へ。 曹休のドアホに、添付した7通の手紙を送りつけてやりました。 この周魴は、これまでパッとせず、複雑な策略を操る能力もない、おバカさんであります。陛下の人智を超えたハカリゴト(酔った席での思いつき、とも言う)により、こんな私でも曹休を引っ掛けることが出来ました。 曹休がノコノコと進軍して参りましたら、1人残らず討ち取って下さい。ご威風を稲妻の如く振るって下さいまし。周子魚より。   果たして!曹休は延々と輜重隊を連ね、100000の大軍を率いて、皖城に向った。 陸遜が迎え撃って、曹休は地獄送りになった。
  ■勝利の宴 周泰が醜態を晒すことを強いられ、孫権が「あなたの傷を数えましょう」と替え歌をやったことは有名です。彼らは、戦から帰ってくると酒を飲むんだ。戦がなくても飲むんだが。   孫権「周魴、キミのその頭はどうしたのか」 周魴「はっ。私が曹休に手紙を送っておりましたとき、お役所より、疑いを受けました。しかし大謀略について明かすわけにはいかず、剃髪して謝罪したのであります」 孫権「キミの功名は、竹帛に記されて、後世まで残るな。ははは」   陳寿は、孫権がこんな意地悪な問いかけをしたとは書いてない。ぼくが勝手に作ったけど、それっぽい気がします笑 羅貫中は、周魴が曹休の面前で「信じてくれ」と髪を落としたことにした。 柴田錬三郎では「信じろつったって、腕を切り落としたわけじゃない。髪なら、また生えてくるぞ」なんて突っ込ませ、羅貫中のガードの甘いところを攻めた笑   ■味をしめた周魴 曹休をハメた功により、周魴は裨将軍・関内侯。 徐衆『異同評』曰く、 臣下は職務に忠実であるべきだ。周魴は太守として民政をするのが本分なのに、勝手に作戦を練った。剃髪までして、親からもらった身体髪膚を傷つけた。成功したが、君子からの称賛は得られまい。 カラいね!冒頭で紹介した坂口和澄氏の言っていた「意地悪い仕掛け」とは、このことか。 手紙を必死に書きまくってるけど、それはお前の仕事じゃないだろう!という、言外の追及なんだ笑 三国志のファンとしては、面白ければいいのだが。策略の妙味も、文人にこうやって批判されてしまった周魴の滑稽さも、どっちもひっくるめて、好きなんだ笑   騙すのが得意だと勘違いした周魴は、また同じことをやる笑 豫章郡と臨川郡では、董嗣が立てこもって迷惑をしていた。呉粲と唐咨が3000で攻めたが、何ヶ月たっても勝てなかった。 周魴は戦闘停止を提案した。周魴は、間諜に策略を授けると、董嗣を殺害して平定した。 相手が曹休より遥かに小粒なんだが、きっとガシガシ手紙を書いたんだ笑
  ■エピローグ 周魴は太守を13年やって死んだ。 子の周処が継ぎ、西晋の武将として落命した。その子の周札は、揚州の豪族として、盛んだった。しかし、好きなように振る舞って怨みを買い、一族皆殺しにされた。 曹休の心の隙間に、偶然入り込んで宝くじを当てた新興豪族は、パッと散ってしまった。子孫が残ってないんだから、遠慮なく非難をされるし、弁護してくれる人もいない。なんか、すごく損な役回りですねえ。おわり。
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