■三国志雑感>三国志の黎明を感じるための『後漢書』目録
三国志の登場人物なのに、列伝が『後漢書』に載っている。そういう人物は、けっこういると思う。ただし、『後漢書』は和訳が高いので笑、網羅的に読むには財布が痛むという悲しみがある。   そこで今回は、『後漢書』のどこに三国志のキャラが潜んでいるか、その目次だけでも作ってみたい。
  ■帝紀はどこから読む? 第07巻 桓帝紀(劉志) 第08巻 霊帝紀(劉宏) 第09巻 献帝紀(劉協)   桓帝の死、霊帝が連れて来られるあたりから読めば、三国志は分かるんじゃないかな。宮城谷氏は遥かに遡って『三国志』を始めたんだけど、党人と宦官と外戚のドロドロを知るには、霊帝からでいいんじゃないかと。霊帝は桓帝の子じゃないから、断絶を感じるし。 孫程とつるんだ桓帝のクーデターの後、圧倒的な外戚が登場しないから、淋しいかもだけど。竇武とか何進じゃ、どうも小粒だよね。 少帝(廃帝)の劉弁は、本紀が立ってないんだね。ぼくは一応、彼も皇帝にカウントしていいと思っているんだが。   ■后妃を気にかける 第10巻 志:桓帝懿献梁皇后、孝桓鄧皇后、桓思竇皇后      宏:孝仁董皇后(霊帝母)、孝霊宋皇后、霊思何皇后(何進妹)      協:献帝伏皇后、献穆曹皇后(曹操女)   この他に、曹操にぶっ殺された董承の娘(董貴人)も気になるところ。霊帝の母と皇后である、董氏と何氏の醜い争いは、三国時代の序曲ですね。 陳舜臣氏『曹操』で、霊帝の宋皇后のことを知りました。曹操の従姉妹の夫の姉なんですね。近いのか遠いのか分からん笑
  ■列伝を拾い読む 第25巻 鄭玄伝(場所がおかしい。数世代前の同名異人か?) 第41巻 橋玄伝(曹操を評すだけが仕事じゃない笑) 第48巻 傅燮伝、蓋勲伝(西方の暴れ者ということらしい)      臧洪伝(初期の曹操と絡みます。反董卓の発起人)   第50巻 馬融伝(鄭玄と盧植の師。ちょっと時代が前だけど)      蔡邕伝(洛陽のオフィシャル回答を作った人) 第52巻 荀淑伝(荀彧の祖父で、荀爽ら八龍の父)      陳寔伝(陳羣の祖父。梁上の君子) 第54巻 盧植伝(軍事を任されたのは不幸だったよね)      趙岐伝(ノーマークでしたが、重要人物っぽい)   第55巻 皇甫規伝、張奐伝、段熲伝(西方を睨む強い武官) 第56巻 陳蕃伝(第二次党錮ノ禁のメイン。清廉の鑑)      王允伝(陳蕃とセットで、計画がコケた大御所という括り?) 第57巻 尹勲伝(霊帝即位のとき、竇武・陳蕃の仲間)      何顒伝(荀彧を王佐と言い、荀攸と謀った人) 第58巻 許劭伝(GET DOWN!月旦!)   第59巻 竇武伝(桓帝の外戚)      何進伝(霊帝の外戚。器じゃないよねえ) 第60巻 孔融伝(曹操に楯突いた、孔子の子孫)      荀彧伝(曹操に背いた、後漢最後の功臣という扱いか)   適当に区切りましたが、どういう順番で載っているのか、どうも分かりません。儒学者と軍人と、時の権力者と、、どういう規則性で並んでいるんだろうか。かなり唐突で、こんな並べ方しか出来ないのなら、おそらく網羅性に欠くような気がしました。 57巻は「党錮」と題されて、李膺を皮切りに、ひどい目にあった人たちが21名も載っています。しんどいねえ。
  ■いわゆる群雄 第61巻 皇甫嵩伝(黄巾平定の第一功労者)      朱儁伝(黄巾平定の第二功労者) 第62巻 董卓伝(無双5では醜く太った。あれでいいのか?) 第63巻 劉虞伝(公孫瓉に目の敵にされた。幻の皇帝)      公孫瓉伝(白馬義従で劉備の先輩で引きこもり)      陶謙伝(劉備への国譲りは、必死の抵抗なのかなあ) 第64巻 袁紹伝(袁氏の三公を、後漢書で暗記してみるとか?)      劉表伝(袁紹と同じ巻に入ってるのが面白い) 第65巻 劉焉伝(同巻の人を見ると、反逆者扱いなのかなあ)      袁術伝(袁紹と同じ巻に入っていない)      呂布伝(董卓とは、えらく離れて分類されたね)   陳寿の「魏書」にも重複する人が多い。これだけ「君主」を並べて載せてもらえると、とても壮観だね。 彼らの離合集散を思い起こすと、掲載順序に込められたメッセージや扱いについて、いろいろ妄想を膨らませると楽しめそうです。
  ■あまりもの 第68巻 曹騰伝(曹操の祖父。活躍時期や少し前か)      侯覧伝、曹節伝、呂強伝、張譲伝      (このサイト内、三国志を知るための後漢「宦官」講座、参照) 第70巻 禰衡伝(口答えの達者な奇人さん) 第72巻 董扶伝(劉焉に益州の天子ノ気を教えた人)      華佗伝(小説の登場人物じゃないんだ笑)      左慈伝(惑いたまえ…の人。房中術) 第73巻 法真伝(逸民の巻。法正の祖父で、あざな玄徳)   巻末の「その他」の人たち。宦者、儒林、文宛、方術、列女などが載っています。部分的に三国志にかすっている人だけ、拾い出してみました。 禰衡と同じ巻に、草書の名人の張超さんがいましたが、張邈の弟とは別人のようです。
  ついに全体の構成がよく分からないまま、ざっと目を通し終わってしまった。同類と思われる人物を、後漢200年から縦断的に拾って、各巻を編纂してあるのだろう。だから、三国志に近いところだけ、横断して切り取ろうとすると、どうも不都合が出てくる。 霊帝が即位してから黄巾の乱まで、15年もある。でもその間の出来事で有名なのは、第二次党錮ノ禁くらい。 乱世である三国時代に慣れてしまうと、このスカスカが気持ち悪い。何かが抜け落ちている気がする。でも(見せかけだけでも)平和の時代には、歴史の密度はそんなものなのかも。   見てみて分かったが、董卓の乱の後から、曹操が中原で主導権を握るまでは、『後漢書』も『三国志』もあんまり綺麗にカバーしてないね。継ぎはぎして、想像力で埋め合わせをしていくしかないかも。   『晋書』と合わせて、『後漢書』も読んで、三国志に対する理解を深めていこうと思います。 各人の細かい本紀や列伝の内容は、また後日アップします。おしまい。
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