■皇帝廃位
かわいそうに曹芳は、254年9月末日付の人事発令で皇帝じゃなくなりました。
次は誰?曹髦くんか。ああ、司馬師に殺される人ね(笑)
■数十丈の彗星が西北に出現
いやあ、天文に異変が起きると、三国志はワクワクするね。不謹慎で危機意識に欠ける発言だと思うんだが笑
255年正月、空を見上げていた毌丘倹と文欽は「オレたちに吉兆だ」と大喜びした。
っていうか、毌丘倹と文欽はドライブでもしてたんですかね。男が2人で外で何をしていたんだろう。庭で酒でも酌み交わしていた、これで筋も通るし雰囲気も出るんだけどさ、ハカリゴトのある2人が外で喋ってんじゃねえよ!思うねえ。
文欽はきっと、大声で機密事項を喋っちゃうよ。酔ってなくても。
太后の詔勅を偽造して、司馬師を討つべしと気合を入れた。
っていうかこの太后さん、司馬懿が曹爽を討つときも、適当に詔勅を代筆されてたよね。やたらと利用される人だね。この人くらいしか「代弁者」に相応しい人がいなかったんだね。
曹髦が言い始めたってのも迫力に欠けるんだ。当世の皇帝の名を犯してはいけない、というルールに沿うなら「髦」のチャイニーズ・キャラクタなんて使いたくても使えないから、世間への配慮はばっちりなんだけどね。李世民とか、本人や本人の親は即位する予定がなくても、大迷惑だったから!
■司馬師の11の罪、いきます!
(01)強大な軍を私有化し、臣下の礼を取らない。
(02)呉蜀追討のための兵糧準備を止めさせた。
(03)東関で諸葛恪に負けた。
(04)合肥新城で恪を破った論功が不充分。
(05)李豊を私刑にした。
(06)曹芳を皇帝から降ろした。
(07)外戚の張緝と妻子を殺した。
(08)新帝即位を祝わなかった。
(09)流刑の許允を路上で餓死させた。
(10)公の軍を私して王朝の防御を薄くした。
(11)曹氏の王を鄴に集めて皆殺し(未遂)
いやあ、素晴らしい!一同が総立ちで拍手喝采ですよ。
よくぞここまで整然とたくさんの罪を引っ張ってきた。「出師の表」とは経路と毛色が違うけど、ものすごい名文なんじゃないかなあ。元の漢文で見る元気はないのだけど。
03と04のように、勝っても負けても司馬師には罪が発生する。06を怒る一方で、08を責めることも忘れない。ちくま訳で6ページある上奏文なんだけど、こうやって要旨だけ箇条書きにしてみると、いかに毌丘倹が頭を絞って司馬師の罪を作ってるか分かるわ!
後半はリフレインが増えるし、けっきょく何を罪として数え上げているのか分かりにくくなる笑
司馬師がやった出来事を、ただ何となくだらだらと書いて、論旨の明快さを欠いてしまうのだ。
さすがに1人で一気書きなんてしてないんだろうけどさ、徐々に気持ちが高ぶってきて、毌丘倹さんは頭の中が劇場状態だったと思うんだよ。最後まで書き上げて、1つのドラマが完結したような達成感を味わったんじゃないか。人間は筆が乗ってくると、同じことを繰り返し始めるからね笑
■司馬昭に代わってくれ
もっとおもろいのは、この「詔勅」の冒頭で司馬懿をしっかりしっかり褒め、途中で司馬孚も褒めること。司馬氏ではなくて、あくまで司馬師個人が攻撃ターゲットなんだ。
あげく「司馬師の弟である司馬昭さんは、誠実寛大で君子の風格があります。司馬師を引退させて、司馬昭に継がせて下さい」なんて言う。
後世の歴史を知ってる者は、笑ってしまうよねえ。司馬懿、司馬師、司馬昭、司馬炎の順番で権力が移って魏が滅ぶんだもん。当主を司馬昭に移したところで、大した差はないのでは?
さらに反則(歴史に結果論を持ち込む)を展開すれば、司馬師は毌丘倹の乱を治めたか治めないかの内に死ぬんだよ。
すぐに司馬昭が後継者になるわけで。このポイントのみ注目すれば、毌丘倹の上奏は叶えられたんだが、魏の皇帝は風前の灯火であり続けるのだよ。かわいいねえ。。
■毌丘倹の布陣
毌丘倹は文欽を伴い、淮南の諸屯営にいる将兵・官民を脅して、強制的に寿春城に入城させた。戦争には頭数が必要だからね、広い大陸に分散した人を集めてくるところから戦争は始まるわけですよ。
日本の籠城戦というと、最優先のの懸念事項は食料。兵として使えない人間を入場させるなんて、愚の骨頂だと思ってしまう。でも中国の城内には、町や生産機能があるからね。食糧不足より、兵数が不足して城壁防御に手が回らないことの方がハイリスクです。
城の西に祭壇を築いて血をすすり、武器を上げて打倒司馬師を誓った。
兵として戦力にならない老人や子供は寿春城の防御に充て、毌丘倹と文欽は6万を率いて淮水を渡った。黄河と長江の真ん中あたりにある、3番目に大きい川だそうで。
寿春の対岸、項まで進出。項といえば、王淩が毒を飲んで死んだ場所だね。のっけから不吉なこと言ってごめん、毌丘倹。
毌丘倹は項城を堅守し、文欽は城外で遊軍となった。
毌丘倹の最終戦の準備ができました!
■司馬師の軍容
司馬師:中央軍を率いて汝陽に駐屯
王基:司馬師の先鋒として南頓を陥落させ、敵を待つ
諸葛誕:豫州軍を率いて、安風津から寿春を伺う
胡遵:青州軍・徐州軍を率い、譙と宋へ向かう
司馬師は目の上の瘤(諺かよ!)を押しての出陣。実は死にかけ。
司馬師の最終戦の準備ができました!
次回最終回、泣いても笑っても、毌丘倹も司馬師も死にます。無常だね。
文欽さんは…