■三国志キャラ伝>使い捨て!惨めな呉の老将、甘寧伝(2)
確認します。甘寧は地元のヤクザです。
 
■ヤクザのしきたり
強い・弱いだけで、序列を付ける。自分より弱い奴を、容赦なく虐める。
じゃあ、もし自分より強い奴に出会ったらどうするか。与えられる選択肢は2つだけだ。殺されるか、服従するか。思考回路がショートしてる連中だから、話し合いとか妥協・譲歩とかは、一切ない。
巴郡の臨江で、甘寧は最強だった。しかし一歩外に出ると、甘寧よりも強い奴はいっぱいいた笑
 
甘寧の人生は、長江を順番に下っていく道のりだ。
一旗あげる。負けて、殺されそうになる。命からがら逃げて、縄張りの外に出る。しかし新天地にも、親分はいる。親分に服従して、保護してもらう。だけど甘寧は短気だから、その親分に逆らってしまう。殺されそうになる。命からがら逃げて…という繰り返しだ。
益州で暴発し、荊州で暴発し、楊州で暴発しそうになって。
孫権の下で、最悪の労働環境で働いたのは、もう逃げ場がなかったからだ。孫呉は長江の最下流を押さえてるもん。
 
■甘寧の年齢チェック
甘寧の生年と没年は分かっていない。
生年の推測材料は、194年の挙兵(後述)までに、20余年ほど地元のヤクザをしていたという事実だ。すなわち、ヤクザデビューは170年くらい。デビューが15歳だとしたら、生年は155年くらい。曹操や孫堅と同じ年だ。
※けっこうアバウトな概算ですが。
 
170年代、曹操は洛陽北部尉をやって名を馳せた。孫堅は交易で儲け、反乱を鎮圧してた。180年代、曹操・孫堅は、中原で黄巾の乱平定に奔走した。自前の勢力を築き始めた。
益州では漢中で、張脩が「天師道」「五斗米師」を広めた。系譜が複雑だけど、すごく大雑把に言えば、張脩が五斗米道の源流だ。張脩は黄巾の乱に呼応して、郡の役所を襲った。
劉焉が「天子の気」に引き寄せられて、益州に赴任してきた。
甘寧は曹操・孫堅・張脩・劉焉と並行して、益州巴郡内で「マイ国家」を確立したことになる。この符号は面白いね!
この時点での甘寧は、将来の割拠勢力と同じ動きをしている。
 
年齢を参照しながら人生を追うと、甘寧のポジションが見えてくる。初めて史書に登場したとき、すでに甘寧は重鎮の風格があったに違いない。ひとかどの英雄になり得た。
『真・三國無双』の若者の風貌なんて、幻想だったんだ。少年キャラの陸遜よりも、さらに年齢を鯖読んでいたのか。
 
■甘寧の没年
「甘寧伝」が年代を記す最後の活躍は、215年の合肥。60歳くらいで、自ら敵陣を荒らしまわったんだね。ヤクザデビューの年齢を若く見積もっても、50代後半。「老骨に鞭打って」という印象だね。合肥で対峙した(ほぼ同じ年齢の)曹操は、翌年に魏王になる。
甘寧は曹操に、えらく差をつけられたもんだ。
 
甘寧は孫権に仕え、周瑜・魯粛・呂蒙と同僚だったイメージがある。凌統と、良きライバルだった印象がある。でもそれは違う。甘寧にとって、孫呉の気鋭の君主・指揮官たちは、息子みたいなもんなんだ。年齢だけなら、孫堅時代から仕えている、程普・黄蓋・韓当らに近い。しかし常に前線に立たされ続けたのは、外様武将のつらさなんだね。詳細は追って見ていきます。

 ■194年の挙兵
甘寧は194年にデビューした。40歳ごろだ。
194年と言えば、曹操が徐州虐殺し、呂布に濮陽で敗れた年だ。曹操と甘寧は、まだこの時点では勝負はイーブン。長安では李カクと郭氾が、献帝を捕まえている。
 
このとき甘寧がいる益州では、元祖・益州牧の劉焉が死んだ。
ここで、益州牧の後任を巡って権力争いが起きた。趙韙らは、操縦しやすそうな劉璋(劉焉の三男)を推した。だが長安政府(李カクたち)は、これを認めなかった。
「劉焉伝」注の『英雄記』にいう。
長安では劉焉の死を聞き、頴川の扈瑁を刺史に任じた。扈瑁を漢中に入らせた。扈瑁が益州のトップに収まれば、劉氏の世襲を防げる。
 
そもそも、劉焉が牧を設置させた張本人なんだ。牧が世襲だという先例なんて、まだない。劉虞は公孫瓉に殺されちゃったしね。「扈瑁を支持します!劉璋を認めない!」という理屈は、いちおう筋は通っている。
頴川出身の清流官人なら、常識的な任官といえる。在野の野心家たちから見れば、いくらでも転覆させるチャンスがありそうだ。天賦の地・益州の恩恵を、奪えるかも知れない!
 
扈瑁を擁して立ち上がった将軍たちに、甘寧が名を連ねている。
あまり知られていないことだけど、甘寧は「劉璋の着任には反対だ!」と挙兵してるんだ。荊州での不遇時代は語られることが多いけど、甘寧の出発地点は故郷の益州なんだ。
益州で、新刺史を助ける将軍として地位を獲得しようとした。
だが残念。甘寧は敗れて、荊州に逃走した。趙韙は荊州を攻めた。劉璋と劉表の対立構図が鮮明になってくる。

 次回で、甘寧さんは荊州に行きます。いいことあるといいね。

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