■三国志キャラ伝>使い捨て!惨めな呉の老将、甘寧伝(3)
■劉表に幻滅した甘寧
甘寧は野望に破れ、長江を下って荊州に入った。
「甘寧伝」注『呉書』にいう。
甘寧らは、劉表のやろうとしていることを観察し、失敗するだろうと察知した。劉表壊滅の巻き添えになることを恐れた。
 
『呉書』には劉表が何をやろうとしていたか、書いてません。でもぼくには分かるんです笑
劉表は袁紹に擁立してもらって、皇帝になろうとしていたんだ。詳細な考察は、このサイト内の劉表伝をご覧下さい。
甘寧は、劉焉と劉表を同じと見たのだろう。劉焉も、皇帝になろうとした人物だ。しかし領内の抵抗勢力の鎮圧に忙殺され、寿命が尽きてしまった。荊州も在地勢力が強い。劉表政権が、蒯越や蔡瑁らの言いなりになっていることを見て、劉表の限界を見たのだと思う。
 
■甘寧は望んで黄祖に従った
『呉書』はいう。
甘寧は、東方の呉に行こうとした。しかし黄祖が夏口にいて、軍を率いたまま通過することは不可能だった。甘寧は黄祖に身を寄せた。三年留まったが、黄祖は甘寧を厚遇しなかった。
 
さて『呉書』がおかしなことを書いてるよ。真実はこっちだ。
甘寧は孫呉に行けず、仕方なく黄祖に従ったのではない。主体的に黄祖についたんだ。
後に孫権に仕えるから『呉書』は、甘寧が呉に気持ちを寄せてるように書いた。でも、まだ孫呉勢力は地上にないのだよ。孫策が、やっと快進撃を開始したタイミング。呉郡も袁術の勢力下と見るのが自然だ。
得体の知れない、まだ事務所すらない会社に履歴書を送るわけがない!
 
甘寧は切実だ。劉璋が寄越した刺客に、いつ殺されるか分からない。
命を守るためには、劉璋と敵対する勢力=劉表の影響下で保護してもらうのがベスト。黄祖が守る夏口は、荊州の東側にある。劉璋の益州から遠いんだ。安全なんだ。
そもそも『呉書』が描く経緯が不自然だ。甘寧が軍勢を引き連れて通ったら、普通は黄祖が迎撃して討ち取るだろうに笑
 
劉表は、できるだけ火種を持ちたくなかった。即位の弊害になったら困るからだ。厄介者の処理は、黄祖に任せていた節がある。禰衡のときと同じだ。甘寧をもてあまして、黄祖に送ったのかも知れない。
暗に「都合で、殺してもOKだからね」みたいなニュアンスで笑

 ■甘寧が凌操を射殺!したが
203年。孫策を継いだ孫権が、黄祖を攻めた。孫権にとって、黄祖は親のカタキだ。しつこく攻める。
甘寧は黄祖に飼われて、もう10年弱。気持ちも荒んでいたんだろう。甘寧は殿軍を務めて、孫権の校尉・凌操を射殺した。しかし黄祖の「冷遇」は変わらなかった。※というのが『呉書』の言い分。
 
この「冷遇」とは何だ。黄祖の視点から考えてみた。
黄祖は甘寧を、将と見ていなかった。単なる食客として扱った。
その証拠が「甘寧伝」にある。
曰く「黄祖は甘寧を普通一般の食客として遇した」と。黄祖は甘寧を、川賊として侮ったんじゃない。ちゃんと礼儀を尽くした。
後年の甘寧の死闘のおかげで、甘寧は有能というイメージがある。その彼をフラットに扱ったことが、「不当な扱い」だと錯覚された。それこそ不当な評価だよ!
 
食客は、衣食住をまかなってもらえて、行動も自由。ただし、火事場では特殊技能を発揮して恩返しすべきもの。
甘寧は凌操を殺して、崩れかけた黄祖軍を立て直した。「将としての功績を見てくれ!」と言いたかっただろうが、黄祖にしてみれば「やっと役に立ったか、ご苦労さん」くらいの温度か。
黄祖は甘寧の手足とも言うべき、甘寧の食客たちを引き抜いて、自分のものにした。ただの居候に過ぎない甘寧が、食客を養っているのはおかしいんだ。二重雇用なんだ。黄祖から支給された品物で、甘寧が決死の士を養うのは筋違いなんだ。これが黄祖の言い分。
 
■蘇飛のはからい
黄祖の都督・蘇飛が、甘寧を気にかけた。
まず黄祖に「もっと甘寧を重用しよう」と頼む。しかし却下。次に、甘寧を隅っこの赴任地に行かせて、いつでも亡命できる手配をしてくれた。
「人生は長くないんです。ここでグズグズしてる時間がもったいないですよ。然るべき君主を見つけましょうよ」と甘寧に勧めてくれた。このとき208年。甘寧の推定年齢は54歳。そうだね、晩年って感じだね笑
 
蘇飛は、なぜ甘寧を大切にしたんだろう。
伴野朗氏の小説では、蘇飛が鼻水を落とした酒を、甘寧が咎めずに飲んだからだ、と書いてある。三国志を貶めるのも、ほどほどにして下さい。物語がせこくなります。ぼくはそう思ったね笑
甘寧が気まぐれで殺した人物が、蘇飛の仇敵だったとか、そんな感じなんかなあ。甘寧はそのつもりはないけど、仇を取ることなんて思いも寄らなかった蘇飛が感激してしまったとか。もしくは、年の波が押し寄せる甘寧に自分を重ね合わせて、せめてこの人だけでも雄飛して欲しい、と願ったとか。
黄祖の戦歴って僥倖が多くて、不透明じゃん。その中に黄祖と蘇飛の対立を盛り込むとか?黄祖は耄碌して、軍事内政ともに怠慢だった(甘寧談)ので、それに反発したんかなあ。
エピソードをよく練る必要がありますね。どう間違っても鼻水は最低だ笑
 
甘寧は元の食客や新しい志願者を集めて、孫呉へと出発した。

 次回やっと甘寧が、孫権に仕えます。お待たせしました笑 

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