■三国志キャラ伝>皇帝になるつもりのおじさん劉表伝(3)
■韓嵩め!裏切ったな事件
お待ちかね?の、この事件について書きます。
『傅子』に言う。劉表は韓嵩に言った。「曹操の弱点を見てきて」と。
頼み方からして、どんな報告を待っているか明白だ。交通費を落として、わざわざ行かせる意味があるんか笑
韓嵩は言った。「私は主君に従順な人間です。主君のためなら、熱湯をくぐり、火を踏むことも平気です」誇張はあるかも知れないけれど、立派なことだね。劉表は、まずは安堵しただろう。
「私は、曹操が優秀だと思います。劉表殿には、献帝に帰順し、曹操に帰服してほしい」韓嵩の攻撃開始。私の意見は、劉表殿とは違います。ご期待に沿える報告は、きっと出来ません。お遣いから帰ってきたら、曹操を褒めちゃうよ、と言ってる。それでもいいかと、釘を刺してる。
「曹操に味方するという前提で私をお遣いに出すなら、喜んで行きます」
私は、現在の劉表殿の命令は聞けません、と告白してしまった。
 
「私が献帝に拝謁して、もし官職を授与されたとします。私は献帝の家来となる。劉表殿の家来じゃなくなる。はじめ私は、主君に尽くす人間だと言いました。私は献帝の命令を守り抜きます。劉表殿のためには、もう死ねません。そうなってもいいなら、曹操を見てきますけど、いかがですか」
おいおい、韓嵩は劉表を脅しているよ。
言葉運びも上手い。うっかりほぼ全文、引用してしまった。
初めに、自分が忠義に厚いことをアピールした。劉表は、自分のために働いてくれるんだな、と安心する。しかしそれは、後半の脅迫の伏線だった。
 
いくら荊州支配を確立したとは言え、劉表は蒯越らを敵に回せない。韓嵩に言いたいだけ言われたけど、韓嵩を曹操のところに行かせた。
韓嵩は案の定、大出世して帰ってきた笑。韓嵩は曹操を褒めた。史書には書いてないけど、きっと当てつけるように、これ見よがしに褒めた。さらに「劉表殿の息子を、人質として曹操のところに送らなきゃダメみたいなんです。誰にしますか」なんて言った。
※「誰にしますか」という挑発は、ぼくが付けた笑
曹操の幕僚は、どこまで読んでいただろう。劉表を味方にするために、その使者を優遇した。表面的にはそう見える。でも底意はもっと深いところにあるかも。劉表の支配基盤の弱点を知ってた、とか。やっぱ曹操って怖い。
 
劉表は怒った。「おのれ韓嵩、二心を抱きやがったな。斬ってやる」と。
※当たり前のお約束の反応です。
ここで劉表は、節(献帝@李カクからもらった軍権委任アイテム)を持ち出した。節って、そういう使い方をするんだね笑
韓嵩は身動き一つせずに返した。「劉表殿が私を裏切ったんです。私が劉表殿を裏切ったのではありません。なぜなら―」と弁明した。劉表はそれでも斬ろうとしたが、蔡氏に止められた。韓嵩を拘禁するに留まった。
劉表には、外はおっとり、中は熱々の猜疑汁がジューシーという負の評価が残った。気持ち悪いなあ。陳寿に「いつもこんな調子なんだよ」と、根拠なしの一般化までされてしまった。
 
■失敗の原因
官渡で、袁紹は負けた。劉表の即位は画餅に帰した。
劉表の失敗は、官渡の勝敗を見誤ったことだろう。だけど、それはしゃーないよ。袁紹自身だって負けるわけないと思って戦っていた。兵力も断然勝っていた。劉表の援軍なんて必要なく、当然のように勝てたはずだ。劉表の読みが甘かったんじゃなくて、曹操に奇跡が起きただけなんだ。
 
劉表が袁紹に援軍することに、デメリットすらあった。将来成立するであろう劉表王朝での、主従の秩序がおかしくなる。
劉表は皇帝で、袁紹は輔弼の臣だ。臣下の権力争いに、なんで皇帝が援軍を出すものですか。下手にそんなことしたら、劉表王朝が成立した後に、皇帝権力が弱くなる。ただでさえ後漢は、豪族の力が強くて不安定だった。教訓を踏まえずに、劉表が王朝に弱点を作るべきではない。
 
劉表には、袁紹を決めたプランがあった。劉表はそのプランありきで形勢を見るから、曹操の実力を見誤った。
だがそれは責められない。劉表が荊州牧として乱世で勝ち抜く理由は、皇帝になるためだった。「袁紹とのプランなかりせば」なんて論じたら、劉表が劉表でなくなってしまう。意味がない。
一方、蒯越や韓嵩はすごい。曹操の実力を官渡決着以前から、見抜いていたんだから。

 次回最終回。劉備が転がり込んできます。劉表、死にます。

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