表紙 > 人物伝 > 『後漢書』荀淑伝:荀彧の祖父は、梁冀と対立し、神君と呼ばれた

西暦83年生まれの荀淑から、上の世代は不明

荀攸について勉強会をやり、
党人としての荀氏の歴史に興味を持ちました。

考察というより、基本的な知識の整理という意味で、
荀淑伝をやります。

荀彧の祖父は、荀子の子孫、83年生まれ

荀淑字季和,潁川潁陰人,荀卿十一世孫也。少有高行,博學而不好章句,多為俗儒所非,而州裏稱其知人。

荀淑は、あざなを季和という。

あざなから、すえっ子であることが分かる。しかし、兄の名は分からない。荀淑は始祖だから、データがすくない。
あとで没年と享年から推定できるが、西暦83年生まれ。

潁川の潁陰の人だ。荀卿から、十一世の孫だ。

荀卿とは、いわゆる荀子のこと。荀子までフッ飛ばすということは、過去の血筋が分からないということを、ぎゃくに分からせてくれる。

荀淑は、わかくして行いが高かった。博学だが、一章一句にこだわって読まない。おおくの世間の儒者から、荀淑は非難された。だが、豫州潁川の人は、荀淑のひとを見る目をたたえた。

清流の人物として、梁冀とやんわり衝突

安帝時,征拜郎中,後再遷當塗長。去職還鄉里。當世名賢李固、李膺等皆師宗之。

安帝のとき、荀淑は郎中になった。のちに當塗県長にうつった。荀淑は、職を去って、郷里にかえった。

安帝の在位は、106年から125年だ。荀淑は、20代なかばから、40代なかばのとき。

李固と李膺らは、どちらも荀淑を師とあおいだ。

李固は列伝53、李膺は列伝57。どちらも清流タイプ。
ところで、李固と李膺は、関係あったっけ?


及梁太后臨朝,有日食地震之變,詔公卿舉賢良方正,光祿勳杜喬、少府房植舉淑對策,譏刺貴幸,為大將軍梁冀所忌,出補朗陵侯相。

梁太后が臨朝した。日食と地震があった。

144年、順帝が死んだときだ。梁太后は、梁冀の妹。荀淑は62歳。

梁太后は公卿にめいじ、賢良方正な人材を、あげさせた。光祿勳の杜喬と、少府の房植は、荀淑をあげた。

杜喬は列伝24。房植は、専伝なし。

荀淑は、梁太后がかわいがっている人を批判した。大将軍の梁冀は、荀淑を忌んだ。荀淑は洛陽から出されて、朗陵侯の相となった。

梁冀は、反対者を殺すこともある。しかし荀淑は、洛陽から出されただけだ。梁冀が真剣に殺すほどには、荀淑に影響力がなかったことが推測できる。官位もひくい
荀淑が対立した梁冀ですが、袁氏は梁冀と仲がよかった。


神君として死に、李膺に祭られる

蒞事明理,稱為神君。頃之,棄官歸,閒居養志。產業每增,輒以贍宗族知友,年六十七,建和三年卒,李膺時為尚書,自表師喪。二縣皆為立祠。

荀淑の政治は、道理がとおった。だから荀淑は「神君」と呼ばれた。
このころ官位を捨てて、潁川に帰った。ひっそり生活して、志を養った。財産がふえるたび、宗族や知友にゆずった。

清流の典型だ。ひとつも例外がない。ぎゃくに云えば、荀淑その人をキャラ立ちさせる情報がなかったか。
『後漢書』は荀彧を、聖漢に殉じた忠臣にえがく。その荀彧の祖父で、しかも荀子の子孫なのだから、清くなければならない。荀淑その人について、ほとんど語らない、ただ枠組みだけの列伝だろうか。

149年、67歳で死んだ。

梁太后が臨朝して、5年目だ。桓帝の3年目。梁冀の死は、159年だ。梁冀と対決するでもなく、おだやかに埋没した。

ときに李膺は、詔書だった。師である荀淑の喪を、あらわした。荀爽がおさめた2県に、ほこらが建った。

荀氏の八龍:六男の荀爽にならぶ、三男の荀靖

有子八人:儉、緄、靖、燾、汪、爽、肅、專,並有名稱,時人謂之「八龍」。

荀彧の父は、次男の荀緄である。三男の荀靖は、下にすこし記述あり。六男の荀爽は、つぎの列伝の主役。

初,荀氏舊裏名西豪,潁陰令勃海苑康以為昔高陽氏有才子八人,今荀氏亦有八子,故改其裏曰高陽裏。

荀淑には、8子がいた。儉、緄、靖、燾、汪、爽、肅、專だ。みな名を知られた。「八龍」とよばれた。
はじめ荀氏の家がある場所は、西豪という地名だった。潁陰令をつとめる勃海の苑康は、センギョクにちなみ、高陽里と地名をあらためた。

苑康は、列伝57・党錮。おそらく荀淑バンザイの与党だ。


靖有至行,不仕,年五十而終,號曰玄行先生。

八龍の1人・荀靖は、ピッタリ儒教どおりに、行動した。後漢につかえず、50歳で死んだ。玄行先生と呼ばれた。

皇甫ヒツ『高士伝』はいう。荀靖は、あざなを叔慈という。わかくして、すぐれた。ある人が、汝南の許章に聞いた。「三男の荀靖と、六男の荀爽は、どちらが賢いか」と。許章は答えた。「荀靖も荀爽も、玉である。荀爽は、外がキラキラ輝く玉である。荀靖は、内がシットリ光沢をもつ玉である」と。荀靖が死ぬと、学生26人が悲しんで、文章をつくった。潁陰令の丘禎は、荀靖を玄行先生とよんだ。

そろそろ会社に行かねば。つづきは後日。100906