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『史記』より、尭舜禹の禅譲劇
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4)マジシャンの王莽
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◆ウソつきの黒幕
ろくに史料も読まず、ひたすら美談だとイメージしていた「禅譲」。 いま『史記』を読んでみると、政事の駆け引きが人間くさいばかりで、それほどいい物ではない。
曹丕が劉協から皇帝を譲られるとき、
「古代の理想的なイベントである禅譲にかこつけて、武力で無理やりに脅して簒奪した」
というニュアンスで語られる。
「どれだけ曹丕が美しい文章でごまかしても、実際にやってるのは恐喝だ。献帝はかわいそうに。曹丕は酷薄であることよ・・・」
なんて具合だ。
このニュアンスの背後には、
「本来の禅譲は、紳士的な営みだろう」
という想定があるわけです。
だが少なくとも『史記』の段階では、特別な意味を持たされていないようだ。『史記』と『三国志』の間で、禅譲についての認識が変わってしまっている。おかしいなあ。
そういう疑問に行き当たるとき、犯人は明らかになるのです。
新の王莽です。
◆王莽のマジック
王莽は、前漢の劉氏から皇帝の位を「譲り受ける」必要があった。
古典に造詣の深い彼は、『史記』その他の記事を参考にして、禅譲のイメージを差し替えてしまった。
先週、名古屋大学で『漢書』の翻訳を手に取り、「王莽伝」をコピーしてきました。
王莽が何をしたのか、明日以降見ていこうと思います。090711
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このコンテンツの目次
『史記』より、尭舜禹の禅譲劇
1)性格の悪い、帝尭
2)虞舜に死んでほしい
3)割を食わされた帝禹
4)マジシャンの王莽
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