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列伝35「袁安伝」を読む 4)意外な雑魚三国志キャラ
袁忠は、あざなを正甫という。袁閎の弟である。
同郡の范滂と友人で、ともに党錮事件で捕まり、釈明して許された。釈明の言葉は、范滂の列伝にある。
初平年間(190-193)、沛国の相となったとき、葦で作った粗末な車で赴任したから、清亮な人だと言われた。(注曰く)ときの沛王は劉琮である。
天下が大いに乱れたので、官を捨てて会稽郡の上虞の客となった。太守の王朗と会ったとき、王朗が供を飾り立てているのを見て、嫌った。仮病を使って、王朗との関係を絶った。
孫策が会稽郡を破ったとき、袁忠は海に浮かんで交趾に逃げた。献帝が許昌に遷都したとき、袁忠を衛尉として召したが、袁忠は着任する前に死んだ。

袁弘は、字を邵甫という。袁氏の門族が貴勢なのを恥として、姓名を変えて徒歩で師の門(?)に歩み、徴辟に応じなかった。家で死んだ。
注の謝承『後漢書』にいう。袁弘はかつて、洛陽の太学に入った。従父の袁逢は大尉で、袁弘を呼び寄せた。宴会で音楽を鳴らすと、袁弘は「頭痛がします」と言って退去して、二度と出てこなかった。袁紹・袁術の兄弟とも、交流しなかった。

袁秘は、袁忠の子。郡の門下議生(議曹に属する吏員)になった。黄巾ノ乱が起きると、袁秘は太守の趙謙に従って、討伐をした。軍は敗れ、袁秘は功曹の封観ら7人と、身体を盾に刃を防ぎ、陣で死んだ。趙謙は、袁秘のおかげで死なずに済んだ。詔して、袁秘らの7人を「七賢」と呼ぶことになった。
謝承『後漢書』によれば、袁秘はあざなを永寧という。

(袁秘と一緒に死んだ)封観は、志節があった。謝承『後漢書』によれば、あざなは孝起といい、南頓の人である。
孝廉に挙げられたが、兄の名声が大したことがないので、自分が先に仕官してしまうことを恥とした。そのため「中風で、ものが言えません」とウソをついた。封観の家が火事になったとき、無言で家を出て難を逃れ、「火事だ」とは叫ばなかった。
後に兄が孝廉に挙げられたので、封観は「中風が治りました」と言って、郡に仕えた。

(注とコメント)
袁忠は、立派な三国志のキャラですね。王朗と絶交し、孫策から逃げて、曹操に招かれました。彼の人となりを知るため、范滂の列伝を読まねば。
この系統は、どうもスネた人が多い。袁弘は、大尉・袁逢が現世を楽しんでいるのに、嫌気が差した。
そして袁秘は、まれに見る雑魚キャラ!
彼が助けた趙謙は、『三国志』で3箇所に登場します。
「董卓伝」に引かれた『献帝紀』より。董卓が寵愛していた異民族が、勝手な振る舞いをしたので、司隷校尉の趙謙に殺された。董卓は激怒した。「うちの愛犬でさえ、人に叱られたくないものだ。ましてやうちの人間を殺すとは」と。趙謙は呼ばれて、殴り殺された。
「劉焉伝」に引かれた『益部耆旧伝』によると、167年に日蝕があったから、賢者を推挙させた。左馮翊の趙謙らは、董扶を推挙したが、病気だと言われて帰ってしまった(ちなみに董扶は劉焉を「益州に天子ノ気が見えます」とそそのかした人です)。
同じく「劉焉伝」に引かれた『英雄記』より。董卓は、劉焉が益州を切り取ったので、司徒の趙謙に軍隊を統率させて、益州を攻撃させた。
ちなみに、ちくま訳では「趙謙が司徒と成ったのは、王允が殺された後だ。官名か人名にあやまりがある記事だろう」という注釈が付いてます。
董卓に殺された趙謙さんと、王允の死後に司徒となった趙謙さんは、別人だろうね。時系列が合わないので。どちらにしろ、あまり活躍はしてない。袁秘は、死に損でしたね。

これで列伝は終わりです。
初代の袁安ばかりカッコよくて、あとは腐っていく皇帝権力に寄り添うばかりでした。王朝そのものが傾いているから、同じ角度で傾いていないと、四世も三公を出すことはできないよね。それは道理です。
そして、清廉を売りにして本筋とは背を向け、まんまと雑魚キャラとして敗走・戦死していく傍流を見つけたことは収穫でした。
最後に、系図を作って載せておきます。
字が小さくて見えなかった。しまった(笑)090216

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このコンテンツの目次
>『晋書』と『後漢書』口語訳
列伝35「袁安伝」を読む
1)袁氏の三公の誕生
2)外戚・竇氏との対決
3)実はダークだった名家
4)意外な雑魚三国志キャラ