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『淮南子』の老荘と淮南三叛
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4)『淮南子の思想』後半要約
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『淮南子の思想』後半の要約です。
◆要略篇の老荘
淮南子は全部で21編。1編から20編は、バラバラである。 タイトルは、
根本の道、めでたき真理、天文、地形、時令、見えないもの、こころ、大本、主君の政術、誤りの是正、世俗への同化、道の働き、ひろく論ず、大切な言葉、兵法の要点、小話のあつまり、処世術、人としての務め、大いなる帰結・・・
こんなだから、『漢書』の分類では「雑家」なのだ。「儒家」とか「法家」「墨家」みたいに、きれいに分けられない。
さらに悪いことに、このタイトルと中身が、あんまり対応していないらしい。ぼくは原文を読んでいないから確固たることを言えないが、金谷氏はそう指摘する。
『淮南子』の最後には、「要略篇」がある。
ただの後書きに思われがちだが、金谷氏によれば、これがもっとも大切だ。
多方面にわたる思想を、「要略篇」が統一したのだと。金谷氏の翻訳に拠りながら、アレンジを加えて引用します。
「要略篇」曰く、
「本を書くなら、分かりやすく書くべきだ。矛盾したことを書き散らかして、要点をまとめなければ、読み手が本質を理解できず、枝葉ばかりに目が行く」
確かにその通りだな。
さらに曰く、
「深遠な『道』について述べながら、現実に目の前にある『事』を述べないならば、この世の中で生きていけない。逆に、現実の『事』ばかり述べて、深遠な『道』を述べないなら、心は貧しいままだ」
解釈をすると、
「要略篇」は、「道」と「事」という対立概念が並べた。そして、読者に本質を分からせるには、「道」と「事」のどちらも論ずべきとする。
だから20篇の本文は、個々に見れば、無茶苦茶で矛盾しまくっているが、どの篇も必要なのだ。決して、単なる支離滅裂なんかじゃないよ。「要略篇」は、そう言いたいらしい。
この態度が、金谷氏から見ると「老荘的統一」になる。異なるものも許容し、摂取しようとしているんだから。
武帝は董仲舒を認め、「大一統主義」を掲げ、儒教の春秋公羊学にまとめた。異学を禁じた。『淮南子』とは正反対である。
◆雑家の中身
春秋戦国の諸子が、『淮南子』に含まれる。金谷氏曰く、
「戦国時代のさまざまな思想体系と比べ合わせてみると、そこに戦国から漢にかけての諸思想のうつり変わりのあとがはっきりとみられるはずである」
というわけで、
儒家、法家、道家、墨家、農家、数術、兵家、さらに神話までを、金谷氏は確認するんだが、ちゃんと引用・要約する気迫がもたないので、このページではやりません(笑)
気になったことを書き留めておくと、『老子』と『荘子』を結びつけて、
――老荘、
と言ったのは、『淮南子』が初めだとか。
◆おわりに
金谷氏があとがきで言っているが、
「老荘ということばは魏晋の時代にこそふさわしいもので、淮南王の時代には決して普遍的ではなかった」
のだと。これは本のタイトルをどうするかという議論に引っ掛けて、述べられていたことです。
ぼくは思想史の研究史を知らないのだが、大きな勘違いをしていた。どういう勘違いかと言うと、
「諸子百家を研究すると、春秋戦国時代だけが対象となる」
というものです。
違います。書物が成立した時期のみを絞って睨んでも、見えてくるものは少ない。むしろ、
儒教がいよいよ面白くなるのは前漢の武帝から後だし、老荘がいよいよ盛り上がるのは、魏の明帝以降、晋の時代だ。だから、単純に時代を区切って読む本を選んでいても、『三国志』を深めることができないのでしょう。
『淮南子』を知らねば、魏晋交代は分からない、とは言えない。だが『淮南子』を知れば、魏晋交代がよく分かる、とは言える。せっかく史料として読める、大いなる先例だから。
老荘を知らなければ、魏晋交代は分からない。これは、わりに強気で言っていいだろう。
◆西晋が滅びた理由
西晋は老荘のあいまいを排除して、儒教の厳密を目指した。 晋を作ったのは、まるで王莽みたいに研究熱心な人たちだ。『晋書』の列伝を読んでいると、半分以上が、政治とは関係ない分野の文化的な著作だったりする。
漢を生きながらえさせた儒教。儒教には、どこか無理があることを覚った曹操により、老荘が注入されて、
「三国鼎立も是認し得る」
という精神的な余裕が生まれた。それがぼくたちに『三国志』という面白い史料を残してくれたわけだが、西晋は古代への揺り戻しをかけたのだ。魏は漢を改革し、晋は漢へ復古した。
案の定、晋は、根元からベキンと折れてしまった。
曹操が赤壁に負けて、儒教的な統一王朝を諦めかけたのが、208年。孫皓が降伏したのが、280年。いわゆる三国時代、すなわち安定した割拠の時代は、72年続いた。
西晋が280年に統一に成功してから、洛陽が劉淵に陥落させられた311年までは、31年。三国時代の半分も持たなかった。
曹操ってすごい!特に赤壁に負けてからの曹操ってすごい!
『淮南子の思想』に啓発されて、儒家と老荘の対立を知り、『三国志』がさらに好きになりました。090627
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このコンテンツの目次
『淮南子』の老荘と淮南三叛
1)魏の貴公子は知っている
2)「淮南」「老荘」「反中央」
3)『淮南子の思想』前半要約
4)『淮南子の思想』後半要約
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