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『[三国志]に学ぶリストラ』を読む
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1)董卓と曹操のリストラ
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渡辺精一氏が94年に出版なさった『[三国志]に学ぶリストラ/諸葛孔明の組織改革』を読みました。
著者が渡辺氏でなければ、このタイトルの本を、絶対に手に取らない自信がある。 世間には、つまらない本が多い。ろくに三国志のことも知らず、小説を1つか2つ読んで、
「三国志は面白い。オレの処世訓にも通じる」
なんて勘違いしてしまう、社会的に成功したオジサンは多い。史実どころか物語のスジすら踏まえず、物知り顔でお説教を垂れる・・・とかね。
94年とは、バブルが崩壊した年?だ。ぼくは子供だったので実感がないが。当時、渡辺氏のところに、
「先生は諸葛孔明に詳しいでしょう。世相を反映し、リストラに絡めて、組織論をやってくれませんか」
と原稿を依頼に行った編集者がいたんだろうね。
結果としてぼくは渡辺氏の本が読めたから(名古屋大学の図書館で)、発想に乏しい編集者に感謝しなければ。
◆本の要旨
組織が存続する限りは、勝ち続け、膨張を続けねばならない。
配下にいる人材の数と質に似合うポストを用意して、満足させ続けねばならない。主君(社長)たる者は、途中退場は許されない。負けるか、勝ち続けるかの2択だ。
この組織の原理に照らしたとき、3人の対照的な経営者がいる。
董卓は、見境なく膨張を続け、配下に目が届かなくなった。だから王允と呂布に裏切られた。
曹操は、膨張するより先に、体制を整えてポストを用意したから、魏を建国することが出来た。
諸葛亮は、思いやりにあふれた君子のイメージが強いが、人材とポストのバランスを適正に保つため、果断にリストラ(人切り)を実行した。
250ページの本の中身は、ほぼこれ。以下で、もう少し内容を詳しく追ってみます。その後で、感じたことを書きます。
◆皇帝というゴール
陳寿の『三国志』は列伝のスタイルで、人物の記録を伝える。だから、個人の「逸話」に目が向きがち。 だが曹操は、配下の「組織」を「逸話」だけで毎日動かしていたのではない。組織論を語るならば、「逸話」ばかり見てはいけない。
群雄が弱者を淘汰すると、軍隊・官僚機構・吏民を吸収する。勝つと、組織は膨張する。 ゆくゆくは皇帝を頂点とする、ピラミッド型の大組織を作るしかない。これは一本道で、他に選択肢はない。群雄は皇帝になりたいのだから、それでいい。
『反三国志』で、龐統が言った。
「天下を統一できたとしても、重臣の功績が大きすぎて、なみの褒賞では満足させられない。困ったことだ」
組織は膨張が宿命だが、人材とポストの数と質のバランスは難しい。
◆董卓の場合
地方で力を蓄え、中央に戻って牛耳るという、往復運動をした。皇帝への一本道を歩んだ。
陳倉で王国(人名)が叛乱したとき、皇甫嵩は、
「孫子は、『百戦百勝よりも、戦わずして勝つほうが偉い』と言った。敵は包囲しておけば枯れるから、軍費をムダに消耗せずに、待てばいい」
と主張した。董卓は、
「いいや、戦うべきだ!」
と主張した。董卓は百戦百勝して、恩賞で部下を養わねばならない。そのためには、国費をはたいてもらう必要がある。
董卓は膨張をくり返したが、事業の再構築を忘れた。裏切るかも知れない反対派に、目が届かなかった。王允と呂布に殺された。
◆曹操の場合
曹操は徐州で大虐殺をしたが、計画的にやったことだ。100万の青州黄巾党を収容するために、徐州を地ならしした。飽和した組織の受け皿として、入植先を確保した。
強大な袁紹に対抗するため、(必要悪と自覚して)董卓と同じく人材を抱き込み、組織を膨張させた。人材を養う資金に欠いたので、発丘中郎将、模金校尉という墓暴きの専門官を設置した。前漢の梁ノ孝王を盗掘したことを、陳琳の檄文でスッパ抜かれた。
河北を平定すると、もう袁紹に対抗する必要がないので、引き締めにかかった。三公を廃止して、丞相と御史大夫に集約した。リストラをして、不要者・反対者を取り除いたのだ。
曹操は、赤壁で負けた。 確かに負けたが、この戦いを、人員削減によるリストラと捉えなおした。吸収した数多くの荊州兵は、赤壁で討ち死にして整理できた。江陵は確保できたのだから、人を雇う原資は増やせる。赤壁で曹操は損ばかりしていない。
韓遂・馬超を討ち、後漢に貢献したということで、魏王になった。
曹操は、名号侯を作った。三国が鼎立し、配れる領地に限界がある。だが、名誉と金銭を与えることで、功臣を納得させられる。曹操は董卓の逆で、先にポストを整えてから膨張したから、成功した。
曹操のリストラには、呉蜀も協力させられた。
夏侯淵が死ぬ。于禁が捕縛される。龐徳が死ぬ。鍾繇が魏諷に連座する。おかげでポストが空き、誰かが出世できる。 三公の制度を復活した。ポストが3つ増えた。こうして曹操は、組織運営に成功をした。
次は、「諸葛亮の場合」です。
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このコンテンツの目次
『[三国志]に学ぶリストラ』を読む
1)董卓と曹操のリストラ
2)諸葛亮のリストラ
3)渡辺氏の盲点、禅譲
4)リストラ必須な西晋
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