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『[三国志]に学ぶリストラ』を読む 4)リストラ必須な西晋
◆三国統一のモチベーション
三国の官位の価値が、(漢代と比べて)低い位置で均衡してしまった。これを打開するモチベーションを持つのは、三国の既製の肩書きでは、満足できない人だ。
すなわち晋王を目指す、司馬昭です。
見事に蜀を滅ぼした。

まだ孫呉が残っているなら、王の位で止めておけばいいのに、司馬炎は皇帝になってしまう。
「孫呉を滅ぼしても、皇帝。孫呉を滅ぼさなくても、皇帝」
これでは、統一への原動力がない。二国時代がダラダラ15年も続くんだが、征呉が始まらないのは、晋の組織が膨張しすぎたからだ。

ぼくは会社員をしていますが、つくづく感じる。ヒマな人は、ロクなことをしない。誰かの欠点を探したり、噂話を広めたりする。課題があり、やや忙しい方が、大同団結できて良い。
「統一はいまだ成らず。孫呉のあるうちは、晋王は王のまま。諸君の官位も、上がりきらないまま。さあ、どうする!」
という方が、健全だった。

◆晋のバブル官位
漢代や三国では、「三公」というのが、人臣のトップだ。
臨時に、その上が置かれたり、統廃合されたりするが、基本的にそれほど人数はいない。
だが晋初は、「八公」からスタートした。三国に三公がいたら、「九公」になるとジョークを書いたが、早速現実化している(笑)

『晋書』志/第十四「職官」よれば、
安平王の司馬孚が太宰となり、 鄭沖が太傅となった。
王祥が太保となった。司馬望が大尉となった。
何曾が司徒となり、荀顗が司空となった。
石苞が大司馬となり、陳騫が大将軍となった。

おいおい。
これに司馬氏との親密度を繁栄した、「五等爵制」が加わる。「公-侯-伯-子-男」がもらえる。
曹丕は皇族の領地を削ったが、司馬氏の諸王は、お金持ちだ。
「曹魏が皇族を虐げ、いざ皇帝がピンチのときに、助けにならなかった。その反省として、西晋の皇族は、権力が与えられた。だが諸王が力を持ちすぎたせいで、八王の乱を招いた」
これは、よくある説明。
西晋の皇族がバブっているのは、曹魏の反面教師もあるだろうが、もともと膨張の傾向が強い王朝だったからだろう。実力以上の名誉と財産が手に入ると、人は道を外す。

◆西晋の末路
西晋は、狭義の八王ノ乱で国力が弱ったところに、異民族が侵入して滅ぶ(永嘉ノ乱)。
そのキッカケをつくったのは、趙王の司馬倫。彼は、司馬懿の息子。どうやら「趙王」という位に不満を感じたらしく、甥の子にあたる恵帝から、簒奪をやってしまう。
「もっと名誉がほしい!」
と、司馬倫が思ったとき、皇帝の位ですら、
「オレがもらっていい褒美」
に映ったらしい。
異姓による革命は、あった。だが同姓による革命って、どれだけインフレした欲望なんだろう。

こんなときこそ、神経質そうな顔をした諸葛亮に再登場を願って、
「国難につき、全諸侯は、一律で2ランク降格します。私も例外ではありません。丞相を辞めます」
みたいにリストラしてもらうことが、必要だった(笑)

◆さいごに
曹丕が皇帝にさせられた時点で、大陸の人たちに身の丈を越えた膨張が、1つ起きた。
バランス感覚に優れていた曹操のさじ加減は、台無しになった。わざわざ赤壁で破れ、夏侯淵を斬られ、于禁を捕らえられ、鍾繇を追放して、リストラをしてきたのに・・・
曹丕は、いちど認めてしまった膨張をナシにはできないから、せめて実態を伴わせようとした。孫呉を攻めまくったが、さっぱり結果がでなかった。三国は鼎立した。

泥仕合をして、三国がボロボロに滅びたら、曹丕のときの膨張は、リセットされたはず。
だが、西晋は魏を引き継いで成立したから、はじめから膨らんだ状態でスタートした。くどいが、いちど起きた膨張は、戻らない。
西晋は、ただでさえインフレした魏朝の上に、蜀のインフレと呉のインフレをプラスして、1国で3国分のポストを抱えた。

永嘉ノ乱で洛陽が陥落し、膨張が解消された。
王導に連れられた瑯邪王・司馬睿は、現地の名士たちと、いちから君臣の関係を作り直すという作業をした。面倒だったが、後漢末以来の膨張と無関係にやれたから、まだ気楽だったと思う。090705
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このコンテンツの目次
『[三国志]に学ぶリストラ』を読む
1)董卓と曹操のリストラ
2)諸葛亮のリストラ
3)渡辺氏の盲点、禅譲
4)リストラ必須な西晋