01) 曹操と夏侯惇は、従兄弟でない
夏侯惇について、気になっていることが5つあります。
とりあえずお報せ
いきなり告知ですが、10年4月25日に、13時から名古屋で、
漢文勉強会をやります!
ぼく(このサイトの作成者)も参加します。
ご興味のございます方は、メールか掲示板にてご連絡ください。
詳細をお伝えします。hirosatoh0906@yahoo.co.jp
夏侯惇の5つの疑問
勉強会の準備をしていて、疑問が出てきました。
1.曹操と夏侯惇は、血縁関係がないのでは
2.曹操が夏侯惇を腫れ物のように扱った理由
3.夏侯惇の性格の特徴は?
4.夏侯惇は、夏侯淵とペアではない?
5.左目を傷つけられた時期は、『演義』より早い
これらについて、現段階の考えを述べます。
1.曹操との血縁関係
ぼくは、曹操と夏侯惇は、真っ赤な他人だと思います。
血縁だとする根拠は『曹瞞伝』のみです。
『曹瞞伝』によると、曹操の父・曹嵩は、夏侯氏の子です。夏侯氏に生まれた嵩ちゃんは、大宦官・曹騰の養子になったと。
『曹瞞伝』とは、名前がモロに表すとおり、曹操を批判する本です。敵である、呉人が書きました。『曹瞞伝』に書かれていることは、小説としては面白いが、史実としては話半分です。
なんで『曹瞞伝』だけが、夏侯氏との血縁を言うか。ぼくは、
「曹操の家は、異姓養子のタブーを犯したんだ」
と、儒教の見地から批判するために、デッチ上げたんだと思う。
遠い呉人だけが、曹氏の血縁を知りえたというのは、不自然。
また魏人が「夏侯嵩」であると知っていたら、同時代史料には、ポロッと残ってしまうだろう。異姓養子には違いないので、いちいち自慢げには書かないだろうが。
夏侯惇の出身地は、沛国譙県。曹操と同じ。これには、ぼくは文句はありません。史書にそうある。
でも、出身県が同じだけで、同族と言えるか。もちろん、違う。『曹瞞伝』に妙に納得し、充分条件と必要条件をゴッチャにしてはいけない。
曹氏と夏侯氏の関係性を言うなら、
「通婚を重ねてきた、心強いお隣さん」
です。運命共同体であることが多い。いざというとき、味方になってくれるかも知れない。
石井仁『曹操』によれば、根拠地の沛国の周辺で、曹操と婚姻で結びついていた氏族は、わりといる。曹操の丁夫人や、丁儀と丁廙をだす丁氏が代表的。曹丕が妹について、
「丁儀は片目です。丁儀でなく、夏侯楙に嫁がせたらどうですか」
と、曹操を誘導した例がある。丁氏と夏侯氏は、曹氏が公や王になっても、婚姻をくり返していたらしい。
曹操は、血縁ある人材が不足した。
上記石井氏の本で指摘されているが、曹真、秦朗、何晏ら孤児や連れ子を、準皇族のような扱いで、味方に取り込んでいる。
「曹氏&夏侯氏の一族の人材が茂っており、磐石だった」
という状況ではない。
次回、残り4つの話をやります。続きます。