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01) 後漢と曹魏の怪談

坂口和澄『正史三国志 英雄奇談』角川学芸出版2009
を読んでいます。
この本は『捜神記』に代表される怪談を集めたものです。しかし、内容が2方向に分裂し、けっこう読みにくい。

坂口氏の本にはお世話になってます。『正史三国志群雄銘銘伝』は、装丁から糸が飛び出るくらい、読みました。好きだから批判するのです。

その欠点を是正するために、本ページを作ります。

坂口氏の本の弱点は、
 ○ピンポイントに怪談を紹介したい
 ○史実のアウトラインを紹介したい
という、二兎を同時に追っていること。編集者の要請で、車裂きの刑にでも遭っているのだろうか。心配になるほどだ。
まあ、万人が読める本を作ろうとしたら、当然の桎梏だが。

このページが想定している読者の方

本の欠点を踏まえ、以下の3つを試みます。
 ○手軽に怪談のみを「復習」「検索」できる工具を作成
  (史実のアウトライン紹介は、他の本でも読めるので)
 ○本を読む時間がないが、ザクッと内容を知りたい方にご紹介
 ○坂口氏の本を買おうか迷っている人に、判断材料を提供

以上にご共感頂ける方に、お読み頂きたいと思っています。
内容を抜粋していきますが、著作権を冒す意図はまったくありません。だから、大胆に省略することがあります。坂口氏の本を読めば書いてあることは、細かく引用しません。ご諒承下さい。
文初の数字は、ページ番号を表します。

後漢の章

020)両漢が210年で滅びるという予言が、『漢書』路温舒伝にある。劉邦の即位から、平帝が禅譲するまでが210年。劉秀の即位から、献帝の死までが210年。『捜神記』153

「献帝が死ぬまで」と緩めるのが、予言を的中させるための操作。

022)173年、黄色い服の人が、洛陽で壁に消えた。見物する人で交通が麻痺。黄巾の乱の予兆。『捜神記』156
022)184年、武器を手にした人間や、動物の形そっくりの草が生えた。『捜神記』161
023)長安の西北、ひげを生やした顔が、樹木に現れた。『捜神記』157
023)186年、後漢の沖帝の陵墓で、1万羽の雀が乱闘。全て首が千切れた。高い爵位の人が、争いあう前兆。『捜神記』163
023)181年、身長214センチの喪服を着た男が、「やがて天が私を天子にする」と言って、姿を消した。『捜神記』160
024)同年、黒気が温徳殿の庭に落ちた。2.4メートルの竜に似ていた。『後漢書』霊帝紀所引『東観記』
024)同年、青い虹が、南宮の庭にかかった。『後漢書』
024)同年、馬が人間を産んだ。『後漢書』

025)霊帝の枕に桓帝が立ち、宋皇后と渤海王を殺したことを責めた。霊帝は恐ろしくなり、死んだ。『捜神記』259

桓帝も暗愚のイメージだが、、霊帝を責める資格があるのかなあ。

026)蒋済の子が、蒋済の夢に現れた。死んで泰山の役人になったが、仕事がきついから、転任したいと訴えた。蒋済が、臨死の歌姫に伝言した。のちに蒋済の子は、楽な仕事に就けたとお礼を言いにきた。『列異伝』

031)若い橋玄は、城壁が光る夢を見た。出世する前兆だと、夢解きされた。鉅鹿太守、度遼将軍、三公になった。『捜神記』52
033)童謡が、劉表が衰える年数を歌った。『捜神記』186
華容県の娘が「荊州に大葬がある」と泣いた。劉表が死んだ。

魏の章

053)曹操は張郃に、度朔君の廟の取り壊しを命じたが、張郃は煙に巻かれた。曹操が殺した。正体は、ロバのような獣だった。『捜神記』407
056)焼いても焼けない火浣布。『魏書』

正史『三国志』のちくま訳で読めます。アスベストらしい。

059)前漢の元帝のとき「5頭の馬が『大いに曹を討つ』」と刻まれた石が出現すると予言された。司馬懿、司馬師、司馬昭、司馬炎、司馬衷の5人だろう。『捜神記』179
061)13頭の馬の話もある。西晋と東晋には15帝いるから、2人多い。桓玄に禅譲した司馬徳宗と、劉裕に禅譲した司馬徳文を除くのか、というのが坂口氏の推測。『漢晋春秋』

習鑿歯が『漢晋春秋』を書いたとき、まだ両晋の皇帝は9人目だった。「晋皇帝はあと6人」という数字は、東晋の命運の長さをイメージして書いたのか、その逆なのか。


066)鍾繇は朝議を長らくサボり、亡霊の女と逢引した。日本の怪談・牡丹灯篭のルーツである。『異林』
069)若い華歆は、赤子の寿命を3歳に決める「司命」という神の会話を聞いた。同時に神は、華歆のことを「公」と呼んだ。赤子が3歳で死んだので、華歆は自分が三公になれると知った。『列異伝』
080)令孤愚と王淩は、星座に縁起を担いで、司馬懿へのクーデターを失敗した。『魏略』

085)東晋の葛洪は『抱朴子』『神仙伝』を著した。葛洪が死んで、仙人になった。葛洪は、曹操をからかった左慈と、孫権をからかった介象をそっくりに紹介した。
093)華佗は70センチのヘビを、女の足から引っ張り出した。華佗は病人に酢を飲ませ、ヘビを吐き出させた。『捜神記』69、70
096)管輅は自分の短命を予言した。『魏書』

『捜神記』のスターは、華佗と管輅のようです。じつは『捜神記』の日本語訳をすでに買ってあるので、そのうち扱うかも。

100)曹丕は周宣に、見ていない夢を占わせた。周宣は、後宮の殺し合いを予言した。実現した。曹丕が「ウソの夢なのに」と驚くと、周宣は言った。「夢は心の表れです。寝ているとき見なくても、そういう発想が起こったというだけで、未来を占う材料になるのです」『魏書』

阮瞻は阮瑀の曾孫。阮瞻は客に「幽霊はいない」と主張した。阮瞻は客を言い負かしたが、客は「幽霊はいる。私が幽霊なのだから」と言って消えた。『捜神記』378
孫呉の朱績の門生も、幽霊に向かって「幽霊はいない」という議論をした。幽霊の来訪意図は、門生をあの世に連れ去るため。門生は、そっくりの人を身代わりに立てた。『捜神記』379

つぎは蜀漢のお話です。小国だけど、ネタ量は大丈夫かな。