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03) 韓非子が、地球市民を説く

岡本光生『2時間でわかる図解/韓非子』中経出版2000
を読みました。
2時間どころか、10分に凝縮しようという試みです。

4章、韓非は君主をどう捉えたか

韓非は、君主の身勝手を責めない。
1ページ目で見たように、衛の霊公は、気分次第で賞罰を加えた。だがそれでいい。君主は、法を破ってもいいのだ。

キーワードは「術」だ。
「術とは、君主が握るものだ。君主は、術をひそかに用いる。臣下は、術を知ることができない。非公開で、つねに変化する」

標準作業が適用されるのは、工場のラインについている作業者だ。
経営者は、ラインの人が気づかないところで生産計画を決めて、ときには雇用を打ち切る・・・標準作業を守っていても、クビのときはクビだ・・・


韓非は、君主が君主たる理由を「勢」と考えた。
「術とは、戦さの流れのようなものだ。君主は、勢を感じ取って、統治する。愚かな君主でも、君主として立てる理由は、彼が勢だけは持っているからだ。勢があれば、愚者が賢者を支配することができる」

煩雑になるので、本に載っていることだけど注に入れます。
戦国時代の君主は、成り上がり者だ。例えば韓非の韓は、晋を分割した裏切り者だ。だから韓非は、血筋の高貴さを、君主が君主たる理由だとは言わない。
また孟子のように「天から受命した」とも、韓非は言わない。


韓非は、君主が「勢」を維持するには、賞罰権を持てと言った。

企業でも、人事権のある役職者や部署が強い。

斉の簡公は、爵位や俸禄を与える権限を、臣下に下げ渡してしまった。そのせいで、君主としての地位をキープできなくなった。

アメを「徳」、ムチを「刑」と、韓非子はいう。

5章、君臣関係は、取引である

韓非子曰く、
「君主が臣下を知るためには、自己申告させることが大切だ」
と。臣下が申告どおりに働いたら、アメを与える。申告と差異があれば、罰する。申告よりも上ぶれしても、処罰の対象となる。昭侯に衣服をかけて罰せられた、冠係のごとくだ。

韓非子は、人事制度として、問題点がある。
臣下が、わざと低い目標を設定して達成率をよく見せるかも知れない。100%を達成した途端に、モチベーションを失うかも知れない。

就職活動のとき、東京の会社で「目標管理」の人事評価だと説明されました。ここに書いてある2点を、ぼくが人事の社員に質問したなあ。
さすがにその会社は、上ぶれは歓迎していたが。


韓非子曰く、君臣は、父子ではない。爵禄をぶら下げるから、臣下は君主のために働くのだ。君主と臣下の利害は対立する。
戦国時代の臣下は、「士」の身分だ。もともと自前で邑を支配していたのに、負けて臣下になった人だ。だから、君主に隷属しない。

今日のリーマンもまた、会社から独立した個人だと思ってる。「ワークライフバランス」が強調されて、むしろ独立を急き立てられていると言ってよいかも?

6章、閉塞した集団をだめにする害虫

図解の本を書いた岡本氏は「韓非は同時代をどう見たか」という発問にしている。でもぼくは「同時代」というより、韓非の属した韓=「閉塞した集団」を想定して読みたい。
なぜなら、そうした方が、今日の日本に住むぼくたちの心に響くからです。組織もしくは国家の一員として、楽しむことができます。

韓非曰く、国をだめにする5つの害虫がいる。
1つ、学者。恰好ばかりつけて、組織を惑わす。
2つ、評論家。口ばっかで、何もしない。外交に口出す奴は最低。

「ご意見番」です。説得が面倒くさいだけで、助けてくれるわけではない。社歴が長く、肩書きが付いていると、害悪は倍増!
過去に急成長して膨張し、いまは逼塞している組織に、こういう人が多いと思う。過去の栄光に酔っている。

3つ、任侠の徒。仲間内の義理ばかりを重んじて、全体を乱す。
4つ、側近。君主に取り入って、私財を蓄える。

利益団体。派閥。だんだん身動きが取れなくなる。

5つ、商売人。働きもせず、利ざやを稼ぐ。

ぼくは経済活動を否定まではできません。
ただ韓非子に感じることもある。国の総生産や、会社の売上が落ちているのに、なぜか儲かっている奴がいる。彼らの報酬は、自ら創造した価値ではなくて、組織内の他人から盗んできたものだ。


韓非の韓は、洛陽をもつ都会だ。都会ゆえに、開発の余地がない。周辺には、魏や晋の強国があるから、国土を拡大できない。
だから韓非は、人口の増加を批判する。食料の取り合いが始まるから。

経済成長が止まって、人口が減り始めた日本は、自然な姿だ。

韓非子曰く、
「人口が増えてしまったら、法を縛って、人間の欲を抑えろ。社会にある欲望の総量が減れば、小さな国でも存続できる」

荀子は「人口が増えたら、礼で欲望を抑えろ」と言ったらしい。

韓非は、人口増加に反対した、珍しい思想家だ。

韓非は、未来に期待しなかった。
なぜなら、限られた生産力の上で、人口が増えれば、世の中はすさむしかないからだ。人口が増えたせいで、
「古代は道徳をきそい、中世は知恵をあらそい、現代は気力をあらそっている」
と社会が変化した。どんどん下らない世の中になった。

エコが宣揚されている、21世紀の地球人と同じか?

おわりに

つぎは『韓非子』を読みたい。
法に対する考え方は、トヨタ生産方式に似たものを感じる。
君臣関係は、会社員生活に使えるでしょう。
世の中に対する認識は、21世紀と背景が似ている。
「古典を読むなら、オリジナルに読みたい。いまこの時代、この境遇のぼくにしか読めない読み方を」
というのが、ぼくの楽しみ方です。100212