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02) 太平洋戦争で、三国志を読む

安野光雅、半藤一利『三国志談義』平凡社2009
を読んでいます。
ぼくより50歳以上も年上の文化人が、座談しています。

2章、英雄と豪傑について

三国志と日本の幕末は似ている。新たな権威が出てきてないから、道義が退廃し、人殺しが自由だ。

◆袁紹
日清戦争の西太后は、「軍艦より庭園が大事だ」と言った。西太后のせいで、清国は滅びた。だが軍艦は敵に沈められるだけだが、庭園は観光資源になった。後世の役に立った。袁紹は、国を滅ぼしたが、後世に観光資源すら残していない。
董卓が皇帝を握ったが、袁紹は董卓を圧迫し、洛陽から追い出した。袁紹の、この政治力は評価できる。

目を疑うが、話者は確かに、李儒ではなくて、袁紹が遷都させたと言ってる。袁紹が董卓を包囲したことに、そんな解釈ができるとは・・・後日考えてみたいネタだ。

袁紹は今川義元に似ている。
歴史に無駄はない。袁紹がいたおかげで、曹操や劉備が出られた。

◆曹操
曹操は、世論を敵に回さないために、劉備を手放した。2001年に金正男が来日したとき、日本が金正男を人質にすれば、拉致問題が解決したかも知れない。だが人質にしたら、国際的信頼が落ちたはずだ。曹操のときと同じである。
曹操は猜疑心が強い。日本の陸海軍は、先入観が強かった。後から有力な情報が入っても、猜疑して受け付けなかった。

◆劉備と蜀臣たち
劉備は『七人の侍』で三船敏郎が演じた菊千代だ。没落した名族の屋敷跡から、家系図を盗んできて「俺はこれだ」と指をさした。
「死ぬ日は同じだ」はインテリの物言いじゃない。
関羽は嫉妬深い優等生、張飛は好キャラ、趙雲は士大夫の美学。
劉備は秀吉、関羽は清正、張飛は福島正則。趙雲は黒田官兵衛。

劉備があちこちにくっ付いている様子が、秀吉なんだとか。ムリな話だ。曹操=信長というイメージに関連づけたかったようだが・・・


◆孫権
自動車の普及する1980年代まで、中国はホントに南船北馬。
「海に近いほうが文明度が高く、山に行くほど野蛮だ」
「革命は北から、文明は南から」
孫権は徳川家康に似ている。

3章、軍師と謀将について

太平洋戦争を研究するために、参謀を6タイプに分けた。書記官、代理指揮官、専門担当、準指揮官、長期構想、政略担当。

こういう分類づくりは好きなんだが・・・あまり上手くなかった、つまり三国志を理解するのに役立ってなかったので、詳細に引用しません。


◆諸葛亮
謎かけ。口八丁手八丁の男とかけて、曹操が孔明を招くと解く。そのココロは「誠意がない」
日本の戦争歌は、戦場の苦しさを歌ったもの。悲壮感が漂っているから、アメリカ人には、反戦歌に見える。家族に心配させぬため、上官に殴られたことは内緒にしたいのが人情だ。諸葛亮の「出師の表」は、つらい心情を謳っているが、反戦歌なのか?

さすが、太平洋戦争を体験した人だから、着眼できるポイントです。つらいとき、ただ「つらいよ」と言えば良いものじゃない。「出師の表」は、どんな政治的効果を狙ったんだろう。

アメリカの10分の1しか国力がなかった日本には、諸葛亮のように、「大勝ちしないが、大負けしない」参謀が必要だった。

蜀と魏が、日米に重なるんですね。


◆荀彧
曹操は会長ふう、劉備は社長っぽい。荀彧は完全な補佐役で、大番頭。社長がボケても、大番頭がいれば、会社は回る。
荀彧は死を賜った。中国人が首を斬るのは、魂を抜くため。首を斬らないと、化けて出る。インディアンは、死体の眼を銃で撃っておかないと化けて出る。日本人は、腹を切る。

戦争経験者が言っている、ってことを忘れてはいけない。


◆賈詡と司馬懿
賈詡は李傕のあと、段煨に仕えた。つぎに張繍。

あ!唯一ここで、三国志の知識が増えました!

中国には、待つ、逃げるという戦い方がある。日本軍が、毛沢東や蒋介石に参ったのは、司馬懿と同じ我慢の戦法。ロシアがモスクワを焼いたときも、ナポレオンは退くしかなくなった。

諸葛亮が司馬懿にレディースを送った気持ちが、日中戦争に出ていた人は、身に染みて分かるようです。
国土が広いから、成立する戦法だと思います。

囲碁のプロは、僅差ででも勝てることが分かったら、臆病なまでに手堅く守る。司馬懿は、諸葛亮に振り込まないように守った。

◆周瑜
幅が1キロある長江で溺れた曹操軍は、大変だったはずだ。東京大空襲のとき、今から見れば、ほんの小さな川で溺れた。思い出の場所が小さく見える現象は、最遠平面で説明できる。

本文で口走られた「最遠平面」は、まったく脱線した知識なんだが、いちおうネットで調べてみました。
ぼくの知識に引きつけると「天球」と同じ考え方。自分の視力が届く、最も遠い距離に、透明な壁を想定する。天体は、この壁の上を平面移動するように見える。
子供のころは、壁の距離が近い。大人になると、壁が遠くなる。だから、身長の伸びを理由とせず、思い出の場所が小さく見える。??

小喬が一~十までの字を含めた漢詩を読み、周瑜に「十~一までの字を入れた漢詩を返して」と頼んだ。周瑜は返答して、見事に婚約が成立したという伝説がある。だが周瑜は、B級の詩人だ。

読みながら、吹出してしまった。たしかに周瑜の詩と伝承されている作品は、あまり上手くない。


◆陸遜と魯粛
ある最強の棋士は、対戦相手に嫌われて、追放された。陸遜はもっとも優れた丞相だったが、一番手ゆえに、讒訴で殺された。
身内からの讒訴は、第三者から見て信憑性が高いから、とくに怖い。話者の父は戦争中に、隣組に讒訴されて、よく連行された。

日本がアメリカの国債を全て手放したら、日米安保条約は破棄だろう。貸し借りの繋がりは、外交に関係がある。魯粛が荊州を劉備に貸しているのは、難しい立場。
日本人は1933年の国際連盟を脱退してから、外交をしていない。戦後は占領されただけ。占領の終了とともに、日米安保条約を結ばれて、やはり外交はない。日本人は、魯粛の立場が分からない。