表紙 > 漢文和訳 > 『資治通鑑』を翻訳し、三国志の前後関係を整理する

189年春夏:霊帝の死

『資治通鑑』を訳します。
内容はほぼ網羅しますが、平易な日本語に置き換えます。

189年春:皇甫嵩と董卓、劉虞と公孫瓚の対立

中平6年春2月、陳倉をかこむ王国は、疲れて帰った。皇甫嵩が、王国を攻めろといった。董卓は、皇甫嵩にいった。
「兵法にある。故郷にかえる兵を、攻撃してはいけない」
皇甫嵩は、董卓に反論した。皇甫嵩は勝ち、万余の首をきった。董卓は、皇甫嵩を怨むようになった。
韓遂らは、王国を廃した。信都令をつとめる漢陽の閻忠は、韓遂の反乱軍をひきいたが、病死した。韓遂たちは、衰えた。

幽州牧の劉虞は、鮮卑に利害をとき、張純の首を、送れと命じた。丘力居は、劉虞のつかいが来たので、喜んだ。丘力居は、劉虞に帰順した。張純は国外に逃げ、みな劉虞に降った。しかし、降虜校尉の公孫瓚だけは、歩騎1万をひきい、右北平にいた。
3月、張純の食客の王政は、張純の首を劉虞におくった。公孫瓚は、烏丸を掃討したいと思った。劉虞は、胡族には恩信をあたえ、降らせるべきだと言った。方針の違いで、劉虞と公孫瓚は、対立した。

189年夏:霊帝が死に、董氏と何氏が対立

夏4月、丙午ついたち、日食した。
太尉の馬日磾をやめて、幽州牧の劉虞を、太尉とし、劉虞を容丘侯に封じた。

『考異』がいう。袁紀では、3月巳丑、光禄勲の劉虞は、司馬となり、幽州牧を領した。しかし范曄は、太尉だという。

蹇碩は、大将軍の何進を、ひどく忌んだ。蹇碩は、中常侍たちとともに、霊帝に吹き込んだ。
「何進を、西に行かせ、韓遂を討たせましょう」

西晋のはじめ、賈充が同じ目に遭っていた!

霊帝は、OKした。何進はひそかに、宦官の作戦を知った。何進は上奏し、袁紹に、徐州と兗州の兵を集めさせた。袁紹が帰ってから、西に行きます、と何進は時期を延ばした。

袁紹が、こんな仕事をしているなんて!何進伝を読み直さねば。


はじめ霊帝は、しばしば皇子を失った。何皇后が、劉弁を生んだ。道術をつかえる、史子ショウに劉弁を育てさせた。だから劉弁を、史侯という。王美人が、劉協をうんだ。董太后は、劉協を育てたから、劉協を董侯といった。
皇太子を立てるなら、劉協がいいと、霊帝は思った。だがその前に、霊帝の病が重くなった。霊帝は蹇碩に、劉協を託した。
丙辰に、霊帝は嘉徳伝で死んだ。34歳だった。

蹇碩は、何進を殺して、劉協を立てようと考えた。蹇碩の司馬をとつめる潘隠は、何進を呼び寄せた。何進は驚き、自軍のなかに籠もった。何進は病と称し、蹇碩の招きを断った。
戊午、劉弁が14歳で皇帝に即位した。

17歳と14歳という2つの説がある。

何皇后を、何太后とした。何太后は、臨朝した。大赦し、光熹と改元した。劉協を、渤海王に封じた。劉協は9歳である。袁隗を太傅とし、大将軍の何進と、尚書の仕事を任せた。
蹇碩が何進を殺そうとしたから、何進は怒った。袁紹は、食客の張津ともに、宦官を誅殺しようと何進にいった。袁紹は代々三公だ。しかも袁紹は、従弟の虎賁中郎将の袁術とともに、豪傑に信頼されている。
何進と袁紹は、ひろく智謀の士を集めた。何顒や荀攸、河南の鄭泰ら20人が集まった。何顒を、北軍中候にした。荀攸を黄門侍郎にした。鄭泰を、尚書にした。彼らは、何進に味方した。荀攸は、荀爽の従孫である。

役職の内容や給与が注釈にあるけど、省略。

蹇碩は、不安だ。中常侍の趙忠と宋典らと、ドラフトを作った。
「何進の兄弟は、朝廷を乗っ取った。天下の党人は、霊帝の側近である宦官を殺そうとした。何進や袁紹たち、党人を捕らえて、殺すべきだ」

蹇碩は、霊帝の寵臣=宦官のトップ=反何進。『資治通鑑』でめだつ。

中常侍の郭勝は、何進とおなじ郡の出身だ。何進のおかげで、権力を得ていた。だから郭勝は、蹇碩の計略に反対した。何進に、蹇碩のドラフトを見せてしまった。
庚午、何進は黄門令に、蹇碩を殺させた。蹇碩がひきいた兵を、何進はすべて手に入れた。

蹇碩の兵=霊帝の直轄兵=董太后の持ち物、かな。


驃騎将軍の董重は、何進の権力とぶつかった。董太后は、政治を仕切りたいと思っていた。何太后は、董太后を閉じ込めた。董太后は怒り、何太后を罵った。
「驃騎将軍の董重に命じて、何進の首を斬るのは、カンタンだ」
何太后はこれを聞き、何進に告げた。

5月、何進は三公とともに、孝仁皇后にいった。
「中常侍の夏ウンらは、州郡からワイロを得ています。傍系から入った皇后は、洛陽にいられない。董太后を、本国に返すべきです」
孝仁皇后は、何進をみとめた。
辛巳、何進は兵をあげ、驃騎将軍の董重をかこんだ。董重は、自殺した。

6月辛亥、董太后は自殺した。何進がひとり勝ちした。
辛酉、霊帝を文陵に葬った。何進は、蹇碩の作戦にこりて、霊帝の葬儀にいかない。大水がでた。

次回、秋と冬につづきます。