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04) 結婚式場の広告と、黄権

前回、安物に飛びつかせる広告を見ました。タレントが商品名を連呼するだけ、という。
今回は、高額商品を買わせる広告です。

情報検索型の広告

2つ目のパターンは、情報検索型だ。
地下鉄で結婚式場の広告を見ても、結婚しようと思わない。電柱で耳鼻科の広告を見ても、行かない。テレビで住宅のCMを見ても、買う気にならない。
だが結婚した人には、式場の広告がすっごく目に飛び込んでくるらしい。耳鳴りがすれば耳鼻科の道順が分かる。家を建てたければ、CMでの認知度が商談の取っ掛かりになる。

さおだけ屋の本で読みました。
「目の前の景色をよく覚えて下さい。目を閉じて下さい。赤いものを思い出して下さい。あんまり思い出せませんね。目を開けて。目の前には、こんなに赤いものがあったんだなあ、と感心するでしょ」

購入して失敗したときのリスクが大きいものほど、検索型になる。

三国が鼎立に持ち込まれると、仕える王朝は慎重に選ぶべきだ。検索型になる。
夷陵の戦いで、長江の北岸に取り残された黄権は、
「蜀に帰れない。嘘つきの呉に仕えるのはイヤだ。まだ魏に仕えたほうがマシだ」
という選択をした。
黄権の蜀への忠誠は、揺ぎない。だから魏呉に仕官する選択肢は、独身者の結婚式場の広告だった。だが進退が窮まって、横目で見ていた魏呉の広告に目を向けた。熟慮して、魏が選ばれた。


キリンビールが総会屋の事件で広告を自粛したら、売上が落ちた。松下電器は、不良品の回収広告を打ったら、信頼された。
ビールは、情報受動型だから、露出が減るとすぐにダメージになる。だが家電は情報検索型だ。消費者は店頭で、松下電器の対応を再検索する。松下電器は売上を伸ばした。

失敗の謝罪と言えば、諸葛亮の第一次北伐です。もし黄巾直後の流動期間なら、
「無能な司令官になんか従えるか!わー」
と解散したに違いない。でも三国は鼎立し、国選びは慎重な情報受動型だ。諸葛亮の対応を見守り、人心は蜀に留まったのだと思う。

白兵戦と空中戦

テレビ広告は、大量にお金をかけて絨毯爆撃をする。空中戦である。

空中戦と著者は言ってるが、空爆である(笑)

飛び込みや電話かけの営業活動は、白兵戦である。お金はかからないが、コツコツとした努力の積み重ねである。
ろくにテレビ広告の結果を検証しないのは、白兵戦をやる人たちに失礼だ。誤爆して、無駄遣いしてたら、どうするんだ。

チッポケな勢力のくせに、皇帝や王侯を自称する人たちがいます。史書では、盗賊みたいな扱いです。
ろくに経営体力がないくせに、彼らは豪華な宮殿を作り始める。これで威信を示したと思っている。これこそ、アホな空爆ばっかやってる愚かな広告主の姿でしょう。

マーケティングとは、他者を知ることである。

おわりに

今回マーケティングの話を膨らましてみて、意外に話の筋が通ったと思っています。自画自賛ですみません。会社勤めすることは、歴史を知ることに通じる。日常の再定義として、悪くない。091025