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02) 司馬睿の父、架空の敗北

寺尾善雄訳『後三国演義』秀英書房1995
を短くアレンジして、ご紹介しています。

晋陽を手に入れ、趙王に進める

晋陽を守るのは、西晋の孟観と周処だ。

2人とも『晋書』に列伝を持つ人物です、いちおう。

劉淵軍の斉万年が攻めた。

斉万年も、西晋に叛乱した異民族です。史実では、とっくに死んでいるはずだ。何と時系列がいい加減な・・・

劉淵の部将は、いつわりに逃げた晋軍につり出されて、3人が捕虜となった。劉淵は妖術を使って、逆襲した。捕虜は助け出された。
晋将の孟観たちは敗れ、劉淵の味方になった。

根拠地の晋陽を得た劉淵は、石珠を、趙王に推挙した。
「西晋の司馬氏の悪政により、人民は苦しんでいます。晋陽のある并州は、むかし王者が都を置いた土地です。今こそ石珠さんは、趙王になって下さい」
「私は一介の女。中原が乱れているのに、趙王を称することなど、できません」
「目先の見解を、仰ってはいけません。万世のため、あなたは趙王になるべきです。もし趙王を辞退すれば、みな失望して去ってしまうでしょう。いちどチャンスを逃せば、後から民を救いたいと思っても、あなたは世を正す手段を失っているでしょう」

娘を守るため、鄴を明け渡す

洛陽では、趙王の司馬倫が、賈皇后を殺した。侍中の孫秀と、斉王の司馬冏が、共犯である。司馬倫は、恵帝から帝位を奪った。

とても雑だが、史実に即している。


さて、政権の中枢にいる斉王の司馬冏は、1人の女に惚れ、妾にしたいと思った。女は、鄴を守っている将軍・烏桓の娘である。

民族を指す「烏桓」が、人名になっちゃった!

娘は思った。
「司馬冏さまは、皇帝の弟です。高貴な血筋です。しかし、手慰みに妾になるなど、私はイヤです。鄴の父上に相談しましょう」

さて劉淵は、鄴を攻めた。
鄴を守っている烏桓は、劉淵に打ち明けた。
「私は西晋のために働いています。しかし娘が、司馬冏さんに迷惑を受けています。西晋のために働きたくない。劉淵さんに、鄴を差し上げましょう」

あっさり、要諦たる大都市・鄴が陥落しました。
ネタバレすると、司馬冏を拒んだ烏桓の娘が、劉淵の妻となります。

司馬睿の父・司馬覲の出陣

劉淵が鄴を手に入れたので、西晋は対策を練った。
瑯邪王の司馬覲に、劉淵を討たせよう」

司馬覲が、東晋の初代皇帝になる司馬睿の父です。
訳者は「司馬勤」としているが、字形の見間違えだと思う。

司馬覲が出陣している間に、司馬覲の妻が、牛金と密通した。妻は身ごもった。これが後に生まれる司馬睿である。

牛金は、曹仁の副将だ。時代錯誤だ。
司馬睿は「馬」氏の子でなく、「牛」氏の子だ。有名な伝説だ。しかも物語の進行に取り込み、ライブで密通させた。これは新しい!


妻の浮気を知らず、司馬覲は出陣した。

史実で司馬覲は、活躍しない。活躍しないからこそ、八王の乱を生き残り、次の時代の司馬氏の血筋をつなげたのだ。

司馬覲の副将は、嵇紹と陸機である。

嵇康の子と、陸抗の子だ。西晋の一級キャラだ。

劉淵は司馬覲に、夜襲をかけた。劉淵は、ニセモノの司馬覲を仕立てて、西晋の城門を開かせた。
だが西晋も負けない。晋将が投げる分銅に、劉淵の部将は墜落させられた。劉淵は、またもや妖術で逆転した。
「私は陰陽道に、いささか心得がござる」

次回、全土を巻き込んだ八王の乱が、
宮中の小競り合いにディフォルメされてます。
まるで模型でシミュレーション。
『後三国演義』で、ぼくがいちばん面白いと思ったところです。