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03) 圧縮された、八王の乱

寺尾善雄訳『後三国演義』秀英書房1995
を短くアレンジして、ご紹介しています。見どころの八王の乱。

連鎖する、八王の殺し合い

劉淵が、司馬覲を追い返したころ・・・
西晋では、烏桓の娘を狙った司馬冏が殺された。司馬冏を殺したのは、成都王の司馬頴と、河間王の司馬顒だ。

荒っぽいけど、やっぱり史実をなぞっている。

劉淵に敗れた司馬覲が、とぼとぼと洛陽に帰ってきた。
「瑯邪王の司馬覲は、文武の才があると言うから、出陣させた。だが劉淵に負けて帰ってきた。司馬覲は重罪である」
司馬覲は、処刑されることになった。

司馬覲は、司馬冏を殺して時流に乗った成都王の司馬頴に賄賂を贈り、助命を願った。司馬覲は、死刑を許された。

史実の八王の乱では、司馬覲は部外者。司馬覲を洛陽に置き、他の王と絡ませているのが、『後三国演義』が面白いところ。

もう1人の時の人・河間王の司馬顒は、
成都王の司馬頴に言った。
「劉淵が強くなり、西晋の士気は低い。智勇の士を出陣させねばならん。無能な人を罰さねばならん。敗れて帰ってきた司馬覲を、勝手に許すとは、成都王さんは、どういう料簡かね。死になさい」
成都王の司馬頴は、匕首で刺された。

ほんとうは、成都王が恵帝を鄴まで連れて行って、大きな戦さをやり・・・というプロセスがある。だが一気に省略して、宴席での暗殺に単純化してある。すごい。


河間王の司馬顒は、恵帝に言った。
「劉淵が、洛陽に迫っています。防御力の高い長安に遷都して、劉淵の攻撃を避けましょう」
恵帝は、白刃で脅された。
「もし君たちが遷都が必要だと思うなら、必要なんだろう」
司馬顒はニヤリと笑った。恵帝の羊皇后が、遷都を聞いて飛び出してきた。羊皇后は、一閃で首を切り落とされた。

馬鹿な!羊皇后は、劉曜に嫁いで、名台詞を言う役割があるのに。

「河間王よ。その遷都、ちょっと待った!」
登場したのは、東海王の司馬越。司馬越は、司馬顒を殺して、恵帝を取り戻した。遷都は、取りやめになった。

史実では、いちど遷都される。その後に、大きな戦さをやって、恵帝は洛陽に戻ってくる。『後三国演義』は、遷都を未然に防ぎ、短縮した。

恵帝が毒殺され、八王の乱が終わる

東海王の司馬越により、恵帝は洛陽に戻った。
「恵帝さま、お疲れになったでしょう。このドンブリに入った麺でもお食べなさい」
東海王が勧めた。
「腹が減ったところだ。東海王は、気が利くな。・・・うぐぅ」
恵帝は、東海王の司馬越に毒殺された。
つぎに懐帝が立った。
「懐帝さまは、武帝・司馬炎さまに似ている。劉淵を倒して、西晋を立て直してくれるのだ」
これは司馬越のウソだ。懐帝は、操りやすい寡黙な人だから選ばれた。

懐帝は寡黙だっけ? これもまた、司馬越の専横を強調するために、ステレオタイプな構図を使っただけかも。

西晋の最後の切り札

新しい懐帝は、劉輿を呼び戻して聞いた。
「劉淵に対抗するには、誰がいいかな」
「遁甲の術が使える、王弥が宜しいでしょう。王弥は、諸葛孔明の再来だと言われております」

王弥は、マジシャンではない。軍師じゃない。西晋の将でもない。むしろ逆で、西晋に叛乱した人だ。
この物語において王弥は、劉淵をさんざん困らせる。劉淵に負けたあと、王弥は劉淵の力強い味方になり、洛陽攻めに協力してくれる。主人公と同類の人物で、最強の敵として現れ、最大の理解者になる。ドラゴンボールのべジータである。

懐帝は王弥を呼んだ。
他にも、桓夷、陶侃、卞壺、温嶠、庾翼、謝輿が出陣した。

東晋の名臣たちです。なぜここに?

劉淵と王弥は、陣形を戦わせた。
この隊列を知っているか。あなたに破ることができるか」

『三国演義』のパクりです。諸葛亮と司馬懿です。

劉淵は王弥を圧倒した。王弥が、味方になった。

次回、最終回。史実とは違う、大ウソを読まされます!