表紙 > 旅行他 > 「総合三国志同盟」のイベントで、立間祥介先生に教わったこと

05) 司馬光は、魯粛が好きだ

総合三国志同盟のオフ会に参加させていただき、
池袋で、あの立間祥介先生の『資治通鑑』の講義を受けました。

張昭による、戦力分析

張昭曰く、曹操は、
「動以朝廷為辞」
である。「動」とは、ややもすれば、何かあれば、ちょっと動くとすぐに、という意味。

漢字は難しくないから、ひとりで読んでたら、絶対に辞書を引かなかっただろうなあ。
曹操は、朝廷を思い通りに動かして・・・なんて訳したはずだ。

曹操は、天子を「挟む」つまり、さしはさむ。
荊州を「奄有」している。「奄」とは、おおう。

このあと張昭は、曹操の水軍のすごさについて説きます。
胡三省の注釈で、船の構造について詳しく書いてあり、立間先生も細かく読まれました。
でもぼくは船にあんまり興味がないので、省略します。

ごめんなさい。手書きメモはあるのだが。ひめがき、とか。


長江の天険は、これまで孫権だけに味方していた。だが曹操が荊州水軍を手に入れたので、アドバンテイジはなくなった。
これが張昭の主張。

魯粛が、決意を促す

張昭が喋っているとき、魯粛は黙ったままだ。
孫権は「更衣」に行った。
貴人がトイレに行くときは、着替えをする。臭いが付くからだそうで。

現代中国のトイレ事情は、日本に比べるとひどい。
孫権のような貴人ですら、着替えなければ気がすまないほど、トイレが不衛生だった。そりゃあ今でも、改善が為されないわけだ。


魯粛が「宇下」で、孫権に追いついた。のきした。
孫権は、魯粛の気持ちが分かっている。孫権は、魯粛の手をとった。
「魯粛よ、何を言いたいのだ?」

・・・とまあ、ここで立間先生の今回の講義は終わり。
すごく名場面で中断。
まあぼくは、漢文を読解するマネゴトは出来るので、先を読めなくはないのだが。いちおう次回までのお楽しみということにします。

『資治通鑑』の特徴

ものすごく、魯粛の役割を強調しているなあ、と思いました。
たまたま今回の教材になった場所が、魯粛ばかりだった、ということもありますが。
周瑜は、次の段落から出てきます。周瑜の役割も大きい。

整理すると、
 1.魯粛が孫権を説得して、荊州へ出発
 2.魯粛が劉備を説得して、足止に成功
 3.魯粛が諸葛亮と親交し、柴桑に帰還
 4.諸葛亮が、孫権に開戦を説くけれども、
 5.曹操の書状と張昭に妨げられて、チャラになる
 6.魯粛が孫権に、最終決断を促す

諸葛亮が説得した効果は、張昭と相殺されていることが分かる。正史や小説を読むといろいろ妄想できるが、少なくとも『資治通鑑』では、諸葛亮の位置づけは噛ませ犬だ。
主役の魯粛は、張昭と正面衝突してエネルギーを殺されない。孫権にコソコソと近づいて、決意を促している。

今後の読書計画

立間先生の本を、ちゃんと読みます。
吉川英治に満足して、『三国演義』の翻訳を、きちんと最初から最後まで読んだことがありません。これで三国ファンを自認しているのだから、罪深い。モグリです。

それから、中華書局から輸入した『資治通鑑』を、ちゃんと読もう。赤壁の戦いに絡むところで、司馬光がどのように状況を整理しているか、とても興味深く読めました。
「陳寿のほうが詳しいじゃん」
と思って、重視していなかった。
でも司馬光が編年体を作るとき、どうやって記事の取捨選択したかを見るのは、とても面白い。ちまたの「正史の秘密を新発見」みたいな本を読むより、1000倍は勉強になるだろうなあ。

次回の勉強会は10年4月17日だそうです。100304