表紙 > 漢文和訳 > 江戸時代の『通俗続三国志』口語訳-巻02~04

05) 諸葛亮の孫が、臣下筆頭

劉備の孫・劉淵と、張飛の孫・張賓が合流した。
異民族の皆さんが、漢の再興に同調した。おもな顔ぶれは、羌族の斉万年、匈奴の郝元度、軍師の陳元達たち。
西晋の秦州を攻めて、漢再興チームが勝っている!

諸葛亮の孫が見つかった

劉淵のところに、大切な情報が入った。
「身長8尺、白粉をつけた冠玉のように美しい顔、スッと通った鼻筋、紫色の眼光をした、賢人がいるそうです」
「誰だろうか。もとの蜀臣だろうか」
劉淵が居場所を占わせ、訪れてみると、諸葛亮の孫(諸葛瞻の子)の諸葛宣于だと分かった。

諸葛宣于と一緒にいるのは、馬謖の子、魏延の子たちらしい。
魏延の子たちは、姓を「胡氏」と改めている。彼らの名乗りは、胡延晏、胡延攸、胡延コウである。

魏延の血を引くことを恥じ、魏姓を捨てたという設定か?
それにしては父の名「延」を冒している。一貫性がないなあ。
胡延攸=コエンユウって聞き覚えがあるが、どんな人だっけ? 思い出せないし、検索にもあまり引っかからない。

馬謖の子が、難色を示す!

劉淵の使者が、諸葛宣于を迎えに行った。
諸葛宣于が言った。
「いま北西で、異民族の斉万年や郝元度が、西晋に叛乱を起こしているそうですね」
「はい。斉万年どのに協力しているのが、諸葛宣于さんの旧主筋にあたる、劉淵さまです」
馬謖の子が、口を挟んだ。
「異民族の陣営に、劉氏、関氏、張氏の武将がいるとは聞いています。しかし天下には、同姓の人がたくさんいます。異民族と連携している劉氏が、本当に私たちの旧主筋なのか、確かめようがありません。斉万年や郝元度のところには、行けません。何のゆかりもない異民族のために、知恵を使うのはゴメンですから」

ぼくは馬謖が好きです。応援したくなってしまう。
「知恵を使うのはゴメン」はぼくがオリジナルで追加しました・・・

そのとき、
「いいえ、劉淵さまは正真正銘、劉備さまの孫です」
と、誰もいないはずの背後から、声がした。諸葛宣于や馬謖の子は、びっくりして顔色を失った。一同が慌てて振り返ると、背後から現れたのは、廖化の子・廖全だ。
「なんだ、廖全じゃないか」

彼らと廖全は、顔見知りのようだ。だったら最初から出てこいよ。
でも、馬謖の子のドジが楽しめたので、良しとしましょう (笑)

諸葛宣于たちは、劉淵への合流を決めた。

孫たちの集結

劉淵は、喜んだ。
「諸葛宣于を得て、龍が水を得たようなものだ」
劉淵は、諸葛宣于を臣下の筆頭にした。

勿体ぶって、一番最後に合流したくせに、諸葛氏がトップ。ファンはそれで嬉しいが、今まで苦楽を共にしてきた人たちは、やり切れないな。
「祖父が偉けりゃ、孫まで偉いのかよ」

諸葛宣于より下の序列は、
関羽の孫、張飛の孫(張賓)、趙雲の孫、黄忠の孫、魏延の子、王平の子(王弥)となった。

関羽の孫の次が「弥」になってた。「張」のミスだと思うので、直しておきました。

劉淵の子・劉和は、父の代わりに、さかずきを先ず諸葛宣于に渡した。諸将は、さかずきを回し飲みした。

劉淵の子が劉和という名なのは、史実と同じ。
劉和は2代皇帝になるけれど、すぐに殺されてしまうんだけどね。
『晋書』載記の劉淵伝より、劉和と劉宣

劉淵は祝った。
「祖父の劉備を支えた顔ぶれが、2代を隔てて、ふたたび集まれた。祖父たちのように団結し、今度こそ漢を復興しよう」

おわりに

書き始めたときは知らなかったが、この江戸時代の出版物は、明代に成立した『続三国演義』または『続三国志』の翻訳なんだそうです。
 参考:雲子春秋 http://d.hatena.ne.jp/chincho/
蜀漢ファンには嬉しい話でしょうが、ぼくは蜀漢よりも西晋のファンです。西晋ファンから見ても、どのように西晋の滅亡が描かれるか、興味があります。
原典との距離の取り方が、ちょっと自分なりに掴めてきたので、このままサクサク進んだらいいなあ。章の数だけで語れば、僅か11%が終了したところです。面白い話だから、最後まで行けるかも? 100131