表紙 > 読書録 > 韓非子の逸話を、最短でまとめる!

01) 発言者により、意味が違う

蔡志忠『マンガ 孫子・韓非子の思想』講談社1990
を読みました。
ここから『韓非子』の話を抜き出します。
マンガだから読みやすいのだが、さらに圧縮したメモです。

最後に考察を加えていますので、お急ぎの方は、こちらだけでも。
06) デスノートとトヨタと韓非子と

職分を堅守せよ

寝冷えする王に、冠係が衣をかけた。王が起きて、言った。
「衣係は職務怠慢だったし、冠係は越権した。
 衣係と冠係とに、どちらも罰を与えよ」

『韓非子』でいちばん有名な話。

爪と牙

虎や豹に、爪と牙がなければ、舐められる。
君主が、賞罰の権限を手放せば、相手にされない。

だから会社では、人事部が強い。

対応の難しさ

鄭公は、胡族に娘を嫁がせた。胡族を討てと進言した重臣を、鄭公は罰した。胡族が安心したとき、鄭公は胡族を討った。

周瑜に鞭打たれた黄蓋を思い出す。重臣は助けられたのか?

善意と悪意

壁が崩れた。その家の子と、隣のオヤジが、同じことを言った。
「壁を直さないと、泥棒に入られるよ」
果たして夜に、泥棒が入った。
家の主人は、こう言った。
「私の子は賢い。泥棒が入ることを見抜いた。隣のオヤジが、泥棒に違いない。壁が壊れていることを、知っていた」
何を言うかではない。誰が言うかで、受け取られ方が変わる。

人は利に釣られる

馬飼は、馬に早く走ってほしいから、馬を可愛がる。医者は、診療報酬がほしいから、膿をすう。王は、人民を戦争に使うため、政治を改善する。棺桶屋は、人の死を願う。
みな利を追う。ひとつのことでも、得をする人と損をする人がいる。

自動車の大量リコールで、部品屋さんは嬉しいそうだ。

聖人は恥じない

越王の勾践や、周の文王は、逆境を恥じないで、努力を続けた。だから成功した。恥辱とは、自分で思い込んで作り出すものだ。

箕子の憂い

殷の紂王が、象牙の箸を使い始めた。箕子は嘆いた。
「象牙の箸が、嘆かわしいのではない。きっと紂王は、欲望がエスカレートして、歯止めが利かなくなるの違いない」

宋人が、玉を献上する

宋の農民が、玉を拾った。大臣に献上したが、大臣は断った。
「人からプレゼントを受けない節操が、私の宝なのだ」
価値観は、人によって違う。

ひとたび鳴けば

楚の荘王は、即位して3年間、命令を出さなかった。人材を見極めたあと、改革に着手した。国を大きくした。
3年間も鳴かず飛ばずだった、大きな鳥の伝説と同じだ。

勝利への道

趙の襄王は、御者にテクニックを教わった。襄王はレースをしたが、御者の職人芸には、勝てなかった。職人芸は、微妙である。

文王の手段

周の文王は、敵対する殷の使者に、差をつけて待遇した。賢者は無碍に扱って、愚者を大切に扱った。
おかげで殷は、賢者を退けて、愚者を重んじた。

うまい! 外交の天才・孫権にすら、この賢さはなかった。

自分に勝つ

孔子の弟子は、悩みに打ち勝って、学問に打ち込んだ。そのおかげで、体格が立派になった。
他人に勝つより、自分に勝つほうが難しい。

巧詐は拙誠に如かず

中山国では、国のための我が子を食った忠臣が、逆に疑われた。国王が捕まえたシカを、勝手に逃がした逆臣が、慈悲深いと言われた。

「お国のために」とリキむと、ロクなことがない。

老馬は道を知っている

道に迷ったら、老馬に道案内をさせる。水に飢えたら、アリ塚を掘る。智者ならば、動物からも習うのだ。

劉備が、無職の青年に礼を尽くし、この逸話の理屈で称えられた。

蚤か虱のたぐい

宋の大臣2人が、孔子の印象を語り合った。
「孔子は、立派だった。孔子の前では、お前はノミだ」
「もし私が孔子に先にあったら、お前をシラミと言ったさ」
大臣が2人とも保身に走ったので、孔子は、宋で就職できなかった。

韓非子は、秦で李斯に殺された。理由はこの話の孔子と同じ。

衛人、娘を嫁がす

衛の男が、娘に言った。
「夫婦は別財産だ。嫁いだら、へそくりせよ」
娘は、へそくりが見つかって離縁された。
「へそくりをしておいて良かった。離縁されても金持ちになれた
欲望の度が過ぎると、もとの目的を見失う。