01) 曹操の部将の気持ちで読む
曹操が『孫子』に注釈したことは、ほとんどの三国ファンが知っています。しかし、曹操が実際に書いた注釈を読んだことがある人って、どれくらいいるのでしょう?
というわけで、曹操の注釈をまとめます。
ただし中島氏の翻訳を、さらにぼくなりに短縮&言換えして引用するので、怪しくなることは必至です。その点は、ご諒解ください。
あくまで、
「曹操が何を書いたんだろう?知りたい!」
と逸る気持ちを、なだめることが第一の目的です。時間と興味があれば、原典に戻って解説と突き合せます。
以下、地の文が、曹操が書いたもの。グレー枠の注釈が、ぼくのコメントです。
1章、計篇
計略とは、勝算を数字ベースで事前に確認することだ。
指導者を選び、ライバルの情報を分析し、兵力を動員する。道のりの遠近や険易を話し合っておく。
孫子のいう「道徳」とは、教育&命令系統のシステムによって実現する、集団秩序の安定のことだ。
孫子は、「道徳により、民衆と指導者が心意気を同じくする」とだけ言っているが、心意気を同じくするには、教育と命令系統が必要なんだと、曹操は補った。法家だ。
民衆が危険を感じる原因は、疑惑だ。民衆は情報弱者なので、少しでも疑わしければ、すぐに大騒ぎする。
孫子は指導者に、5つの資質を求めた。向学心、信用第一、部下への愛情、決断力、禁欲である。私の臣下であるなら、5つを獲得するために、つねに努力すべきだ。
作戦命令を、瞬時に伝達できる合図を、ルール化すべきだ。階級制度とは、政府の官僚組織に当たる。輜重部隊の経営とは、もっとも安全に食料を輸送するルートを維持することだ。莫大な軍事費用は、国庫と税制で担保される。
これらの問題を直接支えるのは、法律制度である。
指導者の優秀さ&実力とは、その人物の道義と人格見識による。
地理を読むには、立体的なイメージを描けなければダメだ。
軍法は指導者が出すもので、全責任は指導者にある。指導者が先頭に立って守り、行動せよ。もし指導者が自ら違反したら、自分自身を罰しなければ、組織は成り立たない。
諸葛亮が馬謖を斬ったのは、明らかにこれに習ったな。諸葛亮は、絶対に曹操の注釈を手に入れて、読んでいたはずだから。
組織の全体方針に従わない人に、指揮権を与えてはいけない。もし全体方針に従わなければ、すぐに首を斬るべきである。
現実の戦場では、教科書どおりの判断は通用しない。
勝てば教科書のおかげ、負ければ自分のせい。うぐ・・・働きづらい・・・
戦さに勝つには、指導者の微妙な采配が必要だ。
兵法には、見習って覚えるフォーマットはない。現場で敵をだまして、とにかく勝つ経験を積むことこそ常道なのだ。
しかしぼくの営業経験に照らすと、納得ができるのです。なぜなら、成功体験のある人は成功を重ねられるが、1度も勝ったことのない人は、信じて動く拠りどころがないから、負け続ける。モチベーションを保てない。ますます低迷する。
つまり曹操は「成功体験のない人材など、オレは要らない」と言った。万人を底上げする教育ではなく、精鋭をより伸ばすための教育だ。
急がば回れ。進軍するとき、待ち伏せを食らうような、直線&最短距離で移動をしてはならない。前漢の韓信は、最短距離に船を並べて敵をあざむき、遠回りして渡河した。
敵軍が強盛なら、正面から対決しない。後方の輜重隊を襲撃せよ。
以下、単なる言い換えとか、『孫子』の読書の手引きに過ぎない言葉は、適当に省略をしています。面白いところのみ抜きます。