表紙 > 読書録 > 中島悟史『曹操注解 孫子の兵法』より、曹操の注釈を抜粋

07) 赤壁の周瑜は、下手くそ

最終回です。最後は火攻めについて。

13章、火陳篇

火攻めは、敵の意表を突くから意味がある。予めバレている火攻めは、意味がない。失敗したら、すぐに諦めよ。

火がつくから怖いのではなく、意外な攻撃だから怖いのです。
そういう曹操さんにとって、赤壁は大した敗北ではない。荊州水軍は確かに焼失したが、火攻めを予想はできただろうから。っていうか、火をつけたのは、ある史料では曹操だったっけ。それなら、なおさら着火を予想可能だったことになる。
着火をしたのが、孫権軍側だったにせよ、周瑜は火計の強みを、半分も使えていない。手に墨の文字を書いて、喜んでいる場合ではない (笑)


水攻めは、敵を分断することができるが、直接ダメージを与えられない。水では、火攻めのように食料を奪えない。水攻めは、逆転するような決定打にならない。

于禁が降服した理由を、曹操が理解できないわけです。
于禁が「たかが水攻めで」降服したことがショックだったはず。もしくは死に際で、理解できなかった。


孫子は、ムダなコストを戒めた。タイミングを外したケチな賞与も、これに該当する。指揮官ならば、自腹を切ってでも、その場で賞与を配るべきである。士気が上がる。

その場で配った以上の賞与を、後から君主が支給してくれるという裏づけがないと、出来ません。
べつに性格がケチじゃなくても、収支が合わないと破産します。振るべき袖がないとね。みんな、ボランティアじゃないんだから!

引用を終えて

終わりまで見ていただいて、今さら「おことわり」を持ち出すのは気が引けますが・・・
じつは、明日から戦場で使えるような具体的な注釈は、けっこう省略しています。なぜなら、明日ぼくが戦場に立たないからです。

ありふれた理由ですが、、興味の方向がそちらに向きません。

それより、人間に対する洞察力とか、組織に関する統制論とか、そういうネタを念入りに拾い上げたつもりです。

感想としては、
「もっと曹操が自分語りをしてくれれば、面白かったなあ」
ということです。
詳細な考察は、専門の人に譲ります。ただこの注釈は、かなり早い段階で書かれたものですね。きっと袁紹と衝突する前です。だから、まだ経験の蓄積も少ないようで。

中島氏は、袁紹を滅ぼした後で、赤壁の前と述べてます。だったら、もっと袁紹や烏桓北伐のネタが出てきても良さそうなのに。


最後になりますが、、
『孫子』が何を、どういう順序で言っているのか、まずそれを頭に入れないと。注釈だけ読んでも、魅力の10%ほどだ。100113