06) 聖人君子であることを放棄せよ
ここから、マキャベリズムの旨みです。
行き当たりばったりに、ぼくがこのページを書いているので、うまくページ構成ができてません。右の目次が無惨です。っていうか、原著の章立てが、あまり整理されていないから、こんなことになるのだが。
14章、軍事に関する君主の義務について
「君主の仕事の目的は、ただ1つです。戦争と軍事組織、訓練です」
「郭嘉は今、3つのことを言わなかったか」
「お聞き逃し下さい。マキャベリは、君主たる人は、軍事にだけ取り組めと述べています。なぜなら、君主が地位を失う原因の第一は、軍事だからです。君主が地位を得る理由もまた、軍事です」
「なるほど」
「軍事力を持たない人が、軍事力を持つ人に勝つ方法はありません。自分の安全を保つには、軍事あるのみ」
「極論だが、嫌いではない」
「狩猟による軍事訓練は有益です。自国領を観察し、防衛に役立てることができます。地形を観察し、戦闘を想定することで、合戦に活かせます」
アカイアの君主、フィロポイメンという人は、平時でも「もしあの丘から敵軍が出てきたら、自軍はどこに布陣すべきか」と妄想していたらしい。鄧艾と同じだ。
「マキャベリは、覇道の信望者か。王道を否定するか」
「いいえ。軍事をまるで省みず、豪華な暮らしに耽っていた、彼の時代の古い君主たちを批判したかったようです」
15章、君主が賞賛されるとき、非難されるとき
「君主は、地位が高いので、賞賛や非難のターゲットになります。ただし君主は、聖人君子である必要はありません」
「ほお」
「人物の評価など、何とでも言いようがあります。パーフェクトに高評価を得るのは、ムリです。悪徳と思われる行為が、君主に安全と繁栄をもたらすこともあります」
「郭嘉は、オレに迎合して、マキャベリを枉げているのではあるまいな」
「誓って」
「では、君主は悪徳であれ、とマキャベリは言うのか」
「さすがにそこまでは。曰く、自らの地位が奪われるような悪評だけは避けよ。これ避ける方法を知る程度に、賢明であれ」
「一連の講釈で、いちばん言いことを言った。褒めてやろう」
16章、気前よさとケチについて
「世間一般でイメージされる方法で、気前よく振る舞うことは、君主にとって有害です。どんどん豪奢に走り、財産を使い果たすことになります」
「まあ、基本だな」
「はい。賢明な君主は、ケチであるという評判を、気に病む必要はありません。ケチは、統治を成功させる悪徳の1つです。倹約すれば、重税の必要がなく、安定した防衛戦争を行なうこともできます」
「だろうな」
「ただし、気前のよさが必要なときもあります。これから君主になろうとする人は、臣民に財産を与えて、支持を集めねばなりません」
「そんな金、どこから出す」
「敵の財産から調達するのです。『孫子』で、兵糧や武器を敵から奪って、現地調達せよと言っています。同じです」
17章、残酷さと慈悲深さは、どちらが良いか
「マキャベリによれば、下手に慈悲深いより、残酷な方が良いそうです」
「オレもそう思う」
「残酷だという評判を怖れて、敵による破壊を野放しにする君主は、本当に慈悲深いのでしょうか。一部を処罰してでも、全体が救われるならば、その方が良いのです」
「そうだ」
「君主に成り上がるとき、危険が伴います。敵がいますから、残酷という評判を得やすい。慈悲深いだけでは、君主になることはできません。また、愛されるより、怖れられる方が安全です。ただし、憎まれてはいけません」
「どうすれば、憎まれないか」
「他人の財産に手を出さないことです。人は、父親の死はすぐに忘れますが、財産の喪失はずっと忘れません」
「マキャベリは感心なことも言うが、そのあたりは蛮族の発想だ」
「私も賛同はしませんが、マキャベリにも言い分はあります」
「言ってみろ」
「他人の財産を奪う口実は、いくらでも見つけられます。いちど強奪した君主はクセになり、強奪を続けるでしょう。恨みを買い続けます。しかし命を奪う口実は、なかなか見つからない。命を奪うことは、病み付きにやりにくい・・・らしいです」
「よく分からんな」
「はい。最後に1つ。臣民は、彼ら自身の意思によって君主を愛します。臣民は、君主が施した残虐さによって君主を怖れます。君主としては、制御可能な要因を利用して、臣民を操作すべきです。つまり、愛されようと心を砕くのではなく、残虐であるべし」
「オレはオレのやり方を変えん」
「もちろん結構です。さて次章は、マキャベリズムの真髄です」