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03) ゾトアオ・孟獲の民族伝説

立間祥介・岡崎由美訳『三国志外伝』民間伝承にみる素顔の英雄たち
徳間書店1990年
を短縮してご紹介しています。

ドジョウがひっくり返れば・・・

諸葛亮は、赤壁の戦いのとき、地元の漁師と話した。
漁師が教えてくれた。
「ドジョウが腹をひっくり返したら、東南の風が吹くよ」
諸葛亮は、命令を出した。
「私はドジョウが大好物だ。ドジョウを持ってきたら、大金で買う
果たして、漁師がドジョウを売りに来た。
「よし、東南の風が吹きますね」

ドジョウの微かな変化を、報告させるために、金で釣った。うまい。自分でドジョウを観察するわけにはいかぬし、気象を探るという本当の目的を宣伝したら、周瑜に警戒されるしね。

湖北省嘉魚県で採録したそうです。

劉備の詐欺事件

魯粛が劉備から、荊州の借用文書をとった。
「わたし劉備は、来年の冬に荊州を返します」
魯粛は安心した。
だが、これを見た周瑜は、悔しがった。
「この証書には、日付が書いてない。来年というのは、いつのことなんだ。何とでも開き直られてしまうぞ」
湖北省の荊州で採録したそうです。

劉備が税収をアップさせる

劉備が、百姓を招いた。張飛が注意した。
「オレたちは財政が厳しい。百姓をもてなしている場合ではない」
「いやいや、貧乏なりのもてなしが、あるものだよ」
劉備は、百姓を招いた。
おかずは出てくるが、なかなかご飯が出てこない。
百姓たちは知った。
「劉備さまは、ワシらを大切に思ってくれている。だが、穀物の税が足りていないんだ。劉備さまに、申し訳ないことをした。納税しようじゃないか」

劉備をあざといと思うのは、ぼくだけじゃないはず。

張飛は、劉備のやり口に、すっかり感心した。
湖北省の公安県で採録したそうです。

ゾトアオ・孟獲の誕生

アジョリテというイ族の村に、夫婦がいた。夫はアヤゾトで、妻はシュヤサマだ。
シュヤサマが40歳のとき、カササギが1000羽と、鳳凰が1000羽が集まった。東の空で星が輝き、アヤゾトの小屋に飛び込んだ。男の子が生まれた。ゾトアオ、のちの孟獲である。
「この子は星の生まれ変わりだ。きっと皇帝になるぞ

つまらん神話ですが、せっかくなので詳しく引用してます。

ゾトアオの成長は早く、5歳で言語をマスターした。
10歳で、暴れ猪を殺し、猛虎を手懐けた。

ゾトアオこと孟獲は旅に出て、999の河を渡り、99999人と会い、拳法を学んだ。
父のアヤゾトは医者だった。昆明城主が病気になったので、
「頭を切り開いて薬を塗れば、治ります」
と診断した。アヤゾトは、城主に殺された。

曹操と華佗の伝説のパクリです。ロコツです。

ゾトアオは、父の仇を討とうとした。だがゾトアオは、首を斬られてしまった。ゾトアオは死んだかと思われたが、そうではない。「首接ぎの秘法」を学んでいたから、生き返った。

諸葛亮と孟獲の戦い

諸葛亮が、南中を攻めた。孟獲は諸葛亮に捕えられた。
孟獲曰く、
「正々堂々と戦えば、負けなかったんだ」
「では、お手並みを拝見しましょうか」
諸葛亮は、孟獲を逃がした。ふたたび孟獲は敗れて、諸葛亮に斬られた。だが孟獲は、「首接ぎの秘法」で復活し、諸葛亮の意表を突いて、諸葛亮を生け捕りにした。
孟獲は、諸葛亮に言った。
「どうだ諸葛亮、恐れ入ったか」
諸葛亮は、シラを切った。
「孟獲よ。首接ぎの秘術なんてセコいことをするな。私も首接ぎの秘術が使えるけれど、フェアに勝負するために、わざと使わずにいるのだ。つぎは秘術なしで戦わないか」
じつは諸葛亮は秘術など知らないのだが、孟獲は騙された。バカ正直に戦って、孟獲は諸葛亮に敗れた。

孟獲は、蜀漢で高位についた。孟獲の官名は、「官上の官」だ。

官吏の上には、皇帝しかいない。郷土の英雄だから、漢族の三国志と矛盾しないように気を遣いつつ、最大級の名誉を与えてる。

あるとき、諸葛亮と親しい人が罪を犯したので、孟獲が斬った。諸葛亮は、不満そうである。孟獲は言った。
「諸葛さん、政治に私情を持ち込むなんて、あんたらしくもない」
「いいえ。私の機嫌が悪いのは、孟獲が罰したからではありません。逆に孟獲が、褒めるべき人を、褒めていないからですよ」
「誰を褒めればよいんだ?」
「孟獲、あなた自身を褒めなさい。あなたは蜀漢のために頑張っているのに、自分自身を甘やかそうとしない。いけないよ」
孟獲は北伐に参加し、死んだ。諸葛亮は、3日泣き続けた。

なぜ首を繋がなかったんだろう?

雲南省の宣威県で採録。イ族が語ってくれた現地の伝説。

イ族で独自に育てた伝説というより、『三国演義』ありきで、二番煎じしたような内容でした。ただの二次創作で、残念です。