表紙 > 読書録 > 三国演義に載らなかった民間伝承『三国志外伝』

08) 苦労性・魯粛の伝説

立間祥介・岡崎由美訳『三国志外伝』民間伝承にみる素顔の英雄たち
徳間書店1990年
を短縮してご紹介しています。最終回です。

仲人をした魯粛

魯粛は、喬玄に言った。
「まえに孫堅が兵糧に困ったとき、私は気前よく、倉ごと提供してやった。いまに孫堅が、私を抜擢しに来るぞ」

話がグチャグチャです。魯粛が倉を提供するのは、周瑜に対してです。孫堅に対してではない。

喬玄は、魯粛を否定した。
「物品を提供したから、優遇してもらえるなんて、あり得ない。魯粛の発想は、賄賂で官位を買っている、宦官と同じじゃないか」
「あ、そうか。道理で孫堅から、便りがないわけだ」
魯粛は、己の誤りに気づいた。喬玄が慰めた。
「おい魯粛よ、落ち込まなくていい。キミが孫堅を訪問する口実を、私が与えてやろう。私の娘を、孫策に嫁がせる約束があるんだ。しかし孫堅は、なかなか約束を実行しない。魯粛が仲人になってくれ」

魯粛は、孫堅を訪れた。
「なに、魯粛が来たか。借金の催促なら、すぐ帰れ」

っていうか孫堅、金を返せよ。喬玄の縁談をムシしたり、悪者だな。

「いいえ縁談を持っていました。名家として評判の高い、焦氏の娘を、孫策と結婚させませんか」
「ありがたい話だ。家柄の低い喬玄と、婚約を約束をしてしまったが、後悔していた。焦氏ならば、申し分はない。魯粛よ、その縁談を進めてくれ」

孫堅は、ほんとうに愚かです。三公になった喬玄の家柄を、バカにするなんて・・・史実と伝説の設定が混在して、意味不明だ。。


魯粛は橋玄の娘を、孫策に娶わせた。孫堅は怒った。
「こら魯粛、お前は焦氏の娘だと言った。だからオレは認めたのだ。喬玄の娘を遣すとは、話が違うではないか」
「中国語の発音では、喬氏と焦氏は同じです」
「だが魯粛は、ウソをついた。縁談は無効だ」
「いいえ。むしろウソつきは、孫堅さんです。喬玄さんとの縁談を、無断でスルーしようとしました」

『演義』にて、諸葛亮のワガママに振り回される魯粛。人のいい調整役である魯粛が、孫堅のワガママにも困らされていたという話でした。この伝説で魯粛は、孫堅に勝ち、喬玄との約束を守らせました。面目躍如。

安徽省の長江あたりで採録したそうです。

小喬が化粧台で、諸葛亮を呼ぶ

周瑜は激怒した。
「おのれ曹操。私の妻・小喬を、銅雀台に閉じ込めようなどと。曹操は、夢でも見ているのではないか」
小喬は、周瑜に願った
「赤壁が見えるところに、化粧台を築いて下さい
周瑜は、きょとんとした。小喬は補った。
「あ、もちろん、化粧台と言いましたが、実際は指揮台です。私も兵法を勉強しましたから、曹操を打ち破る作戦を考えます」
小喬は火計を思いついた。
「周瑜さま、火計は有効ですが、東南の風が足りません。諸葛亮を呼んで下さい
「さすが小喬だ。曹操に勝てる気がしてきた」

『演義』で周瑜を殺すのは、諸葛亮です。諸葛亮を招くとは、小喬は夫を殺したかったのか (笑)

周瑜が、叔父を殺す

周瑜は、曹操に故郷を攻められた。周瑜は言った。
「叔父上、いまに曹操が来ます。曹操は周氏を悪んでいます。きっと殺されるでしょう。叔父上も逃げて下さい」
「隠れる場所は、いくらでもある。足さえあれば、どこにでも行ける。私は逃げない。周瑜は、どこへでも行きなさい」

のちに周瑜が軍勢を盛り返した。周瑜は、叔父を迎えに行った。叔父の家は、前と変わらず、平穏で裕福だ。
宴会をしていると、叔父は周瑜に言った。
「周瑜よ、部下への給与は、私に配らせてくれないか。部下への食料の支給も、私がやる」
周瑜は悟った。
「叔父は、曹操と通じているのだ。わが軍の金を横領し、わが軍の人数を調査するために、何でも自分でやりたがるのだ。曹操の思いどおりにさせるか」
周瑜は、叔父を斬った。

周瑜の知恵を伝える話でしょうが・・・三公の家柄の周氏が、曹操に通じていたというのは、史実としてありそうで興味深い。

安徽省の舒城県で採録したそうです。

おわりに

庶民の伝説は、史実から離れるのを嫌うらしい。意外にも、地味で大人しい伝説ばかりでした。
230ページの本を短縮して紹介するつもりでしたが・・・これはこれで長くなってしまった。けっこう大胆に省略し、勝手に語り口を改変しています。ご興味を持たれた方は、『三国志外伝』ないしは原典の中国語資料に当たってみて下さい。100210