8)2つの頭をもつ子
愍帝を倒さないと、漢は空中分解を起こしそう。
官位の整備
聰以劉易為太尉。初置相國,官上公,有殊勳德者死乃贈之。
劉琮は、劉易を大尉に変えた。はじめて相国を設置し、ランクは上公の上とした。漢に対して勲功のあって死んだ人に、官位が贈られた。
於是大定百官,置太師、丞相,自大司馬以上七公,位皆上公,綠綟綬,遠遊冠。置輔漢,都護,中軍,上軍,輔軍,鎮、衛京,前、後、左、右、上、下軍,輔國,冠軍,龍驤,武牙大將軍,營各配兵二千,皆以諸子為之。置左右司隸,各領戶二十余萬,萬戶置一內史,凡內史四十三。單于左右輔,各主六夷十萬落,萬落置一都尉。省吏部,置左右選曹尚書。自司隸以下六官,皆位次僕射。置御史大夫及州牧,位皆亞公。
於是大定百官,置太師、丞相,自大司馬以上七公,位皆上公,綠綟綬,遠遊冠。
置輔漢,都護,中軍,上軍,輔軍,鎮、衛京,前、後、左、右、上、下軍,輔國,冠軍,龍驤,武牙大將軍,營各配兵二千,皆以諸子為之。
置左右司隸,各領戶二十余萬,萬戶置一內史,凡內史四十三。
單于左右輔,各主六夷十萬落,萬落置一都尉。
省吏部,置左右選曹尚書。自司隸以下六官,皆位次僕射。
置御史大夫及州牧,位皆亞公。
以其子粲為丞相、領大將軍、錄尚書事,進封晉王,食五都。劉延年錄尚書六條事,劉景為太師,王育為太傅,任顗為太保,馬景為大司徒,硃紀為大司空,劉曜為大司馬。
以其子粲為丞相、領大將軍、錄尚書事,進封晉王,食五都。
劉延年錄尚書六條事,劉景為太師,王育為太傅,任顗為太保,馬景為大司徒,硃紀為大司空,劉曜為大司馬。
長安攻めの失敗
曜複次渭汭,趙染次新豐。索綝自長安東討染,染狃於累捷,有輕綝之色。長史魯徽曰:「今司馬鄴君臣自以逼僭王畿,雄劣不同,必致死距我,將軍宜整陣案兵以擊之,弗可輕也。困獸猶鬥,況于國乎!」染曰:「以司馬模之強,吾取之如拉朽。索綝小豎,豈能汙吾馬蹄刀刃邪!要擒之而後食。」晨率精騎數百,馳出逆之,戰於城西,敗績而歸,悔曰:「吾不用魯徽之言,以至於此,何面見之!」於是斬徽。
劉曜はふたたび、渭汭に入った。趙染は、新豐に入った。西晋の索綝は、長安から東に出征し、趙染を攻めた。趙染は連勝したから、索綝を侮った。
趙染の長史である魯徽は、趙染に言った。
「いま司馬鄴(愍帝)の君臣は、関中で皇帝を僭称しています。軍の雄劣は、むかしと同じではありません。必ず死ぬ気で、私たちを防ぐでしょう。趙染將軍は、陣を整えて司馬鄴を討って下さい。敵を軽んじてはいけません。追い込まれた獣は、牙を剥きます。まして追い込まれた国は、獣以上に奮闘するでしょう」
趙染は言った。
「司馬模は強かったが、漢軍は腐った木をくだくように破った。
西晋の将軍・索綝のような小童は、馬蹄で踏み潰して、オレの刀で斬ってやる。司馬鄴を捕縛して、その肉を食らってやる」
趙染は、夜明けに精騎數百を率いて、西晋軍を迎撃した。城西で戦い、趙染は西晋に敗れた。趙染は悔いて言った。
「オレは魯徽のアドバイスを用いなかった。そのせいで、こんな目にあったのだ。どんな顔をして会えばよいのか」
趙染は、魯徽を斬った。
まあ現場の将軍レベルなら、体面を保つために暴走しても、器量に照らすと仕方ないのかもね。君主には当然許されないが。
徽臨刑謂染曰:「將軍愎諫違謀,戇而取敗,而複忌前害勝,誅戮忠良,以逞愚忿,亦何顏面瞬息世間哉!袁紹為之于前,將軍踵之于後,覆亡敗喪,亦當相尋,所恨不得一見大司馬而死。死者無知則已;若其有知,下見田豐為徒,要當訴將軍于黃泉,使將軍不得服床枕而死。」叱刑者曰:「令吾面東向。」大司馬曜聞之曰:「蹄涔不容尺鯉,染之謂也。」
魯徽は、斬られる前に、趙染に言った。
「趙染将軍は、私のアドバイスを無視して敗れました。恥を隠すために、いま忠良な人間(私)を誅戮しようとしている。生きている資格のない人だ。袁紹は同じことをして、部下の将軍たちに裏切られ、滅びたんだ。
私の思い残しは、大司馬(趙染の上官・劉曜)に一目も会えずに死ぬことだ。もし死後も意識が持続するならば、あの世で田豊に会って仲間になろう。田豊とつるんで、趙染将軍が枕の上で穏やかに死ねないように、黄泉の国で訴えてやるからな」
大将の劉曜が人望を失っていないのが、漢の救いである。
魯徽は、死刑の執行者を叱りつけた。
「私の顔を東に向けろ」
大司馬の劉曜は、魯徽の最期を聞いて、言った。
「馬の足跡が作ったような小さな池には、一尺もある鯉は入らないという。このコトワザは、趙染のことを言ったのだな」
まあ趙染の人間がちっちゃいのも問題だが、趙染の下に魯徽を置いていたのは、劉曜なんだけどね(笑)余計なお世話だが、組織の底の浅さを感じます。
劉曜の池の大きさは、いかほどのものか。また後日、劉曜伝にて。
曜還師攻郭默於懷城,收其米粟八十萬斛,列三屯以守之。聰遣使謂曜曰:「今長安假息,劉琨遊魂,此國家所尤宜先除也。郭默小丑,何足以勞公神略,可留征虜將軍貝丘王翼光守之,公其還也。」於是曜歸薄阪。俄而征曜輔政。
趙染寇北地,夢魯徽大怒,引弓射之,染驚悸而寤。旦將攻城,中弩而死。
劉曜は、軍を長安から戻した。
劉曜は、懷城にいる西晋の郭默を攻めた。劉曜は郭默から、米粟80萬斛を奪った。3列の陣を布き、奪った食料を守った。漢帝の劉聡は、劉曜に使者を送った。
「いま長安を破れず、劉琨も勢力を伸ばしている。劉琨こそ、わが漢にとって真っ先に除くべき敵だ。郭默はザコだから、わざわざ劉曜さんの神略を煩わすまでもない。征虜將軍の貝丘を残し、王翼光に輔佐させて、郭默の相手をさせろ。劉曜さんは、戻ってこい」
劉曜は、劉聡の指示に従い、薄阪に帰った。にわかに劉曜は、劉聡を輔政することになった。
愍帝は西晋皇帝に数えられるが、むしろ東晋に近い。統一国家を治めない 。ひとつの地域を治め、五胡と対峙した。
趙染は北地郡を攻めていた。夢に、趙染が殺した魯徽が出てきた。魯徽は大怒して、趙染に矢を当てた。趙染は夢に驚いて、飛び起きた。翌朝、西晋の城を攻めようとしたとき、弩がヒットして死んだ。
後継争いの始まり
聰以粲為相國,總百揆,省丞相以並相國。平陽地震,烈風拔樹髮屋。光義人羊充妻產子二頭,其兄竊而食之,三日而死。聰以其太廟新成,大赦境內,改年建元。
劉聡は、劉粲を相國にして、政治の全般を任せた。丞相のポストを廃止して、役割を相国に合わせた。
平陽で地震があり、烈風が樹髮屋を抜いた。光義郡の人・羊充の妻は、2つ頭がある子供を生んだ。その兄は、2つ頭の子をひそかに食べた。兄は、3日後に死んだ。
「其兄」とは、2つ頭よりも前に生まれていた子か?それとも、頭のうちの1つか?判定は、のちの漢帝国の成り行きを知らねばできまい。頭が2つの子供とは、皇帝の後継争いを暗示するのだから。
劉聡は、太廟を新たに作り、大赦して「建元」と改元した。
雨血於其東宮延明殿,徹瓦在地者深五寸。劉乂惡之,以訪其太師盧志、太傅崔瑋、太保許遐。志等曰:
東宮の延明殿に、血の雨が降った。血の雨は、瓦を貫通し、地面に5寸の深さでめり込んだ。東宮にいる皇太弟の劉乂は、血の雨を悪んだ。
劉乂は、皇太弟の太師・盧志と、太傅・崔瑋と、太保・許遐を訪ねた。盧志らは、血の雨を踏まえて、コメントした。
「主上往以殿下為太弟者,蓋以安眾望也,志在晉王久矣,王公已下莫不希旨歸之。相國之位,自魏武已來,非複人臣之官,主上本發明詔,置之為贈官,今忽以晉王居之,羽儀威尊逾于東宮,萬機之事無不由之,置太宰、大將軍及諸王之營以為羽翼,此事勢去矣,殿下不得立明也。然非止不得立而已,不測之危厄在於旦夕,宜早為之所。四衛精兵不減五千,余營諸王皆年齒尚幼,可奪而取之。相國輕佻,正可煩一刺客耳。大將軍無日不出,其營可襲而得也。殿下但當有意,二萬精兵立便可得,鼓行向雲龍門,宿衛之士孰不倒戈奉迎,大司馬不慮為異也。」
乂弗從,乃止。
「劉乂さまが次の皇帝となるのは、大衆の願いだ。しかし劉聡さまは、相国のイスに(弟の劉乂ではなく)、子の劉粲を置いた。相国は、曹操の故事以来、人臣が就くポストではない。本来ならば、劉乂さまが相国となり、政治を見るべきであるのに。劉粲は油断しがちな人物だから、刺客1人で片付けられる。クーデターを起こして、劉乂さまが実権を握るべきだ」
劉乂は、盧志の提案を採用しなかった。
この時点で、劉粲は相国だ。人臣と皇帝のあいだだ。匈奴の国には、次の皇帝を暗示するポストが多すぎる。「相国」と並んで「単于」も、次期皇帝を意味する。官名は2民族分がダブルにあっても、皇帝は1人なんだが。